ヨウ素 薬学無機化学 薬剤師国家試験83回問5
第83回薬剤師国家試験 問5
ヨウ素に関する次の記述の正誤を判定してみよう。
a ヨウ素のエタノール溶液とヨウ素のクロロホルム溶液とで色が異なるのは、これらの溶媒とヨウ素との分子間相互作用が異なるためである。
b ヨウ素は、還元作用により殺菌効果を示す。
c ヨウ素分子は、2個のヨウ素原子が共有結合したものである。
d 結晶中では全てのヨウ素分子は、ヨウ素原子に解離している。
e ヨウ素は、大過剰のKIが存在すると、水溶液中ではほとんどが I3−として溶存している。
83回薬剤師国家試験 問5 解答解説
◆ aについて
a 〇 ヨウ素のエタノール溶液とヨウ素のクロロホルム溶液とで色が異なるのは、これらの溶媒とヨウ素との分子間相互作用が異なるためである。
ヨウ素のエタノール溶液では、エタノールのOH基の非共有電子対がヨウ素に供与される形となっており、
ヨウ素が電子受容体(アクセプター)で、エタノールが電子供与体(ドナー)の電荷移動錯体を形成している。
この電荷移動錯体形成に伴う新たな光吸収帯の出現により、ヨウ素のエタノール溶液は褐色を呈する。
一方、ヨウ素のクロロホルム溶液は赤紫色である。
これは、ヨウ素とクロロホルムの間にはファンデルワールス力のみによる分子間相互作用が働いているため、ヨウ素分子の赤紫色がそのまま現れると考えられる。
◆ bについて
b × ヨウ素は、還元作用により殺菌効果を示す。
→ 〇 ヨウ素は、酸化作用により殺菌効果を示す。
★参考外部サイトリンク
ハロゲンの酸化力とハロゲン化物イオンの安定性(黒豆納豆の特許翻訳さん)
◆ cについて
c 〇 ヨウ素分子は、2個のヨウ素原子が共有結合したものである。
◆ dについて
d × 結晶中では全てのヨウ素分子は、ヨウ素原子に解離している。
→ 〇 ヨウ素の結晶において、ヨウ素はヨウ素分子として存在している。
ヨウ素の結晶は分子結晶である。分子結晶とは、分子同士が分子間相互作用で結びついて結晶構造を形成しているものであり、ヨウ素の結晶のほか、ドライアイス状態の二酸化炭素、氷、ナフタレンなどがある。
分子結晶は結晶を構成する結合力が分子間力であり相対的に弱いので、このことから、柔らかい、沸点・融点が低い、昇華することがある、といった性質を有する。
★参考外部サイトリンク
分子結晶(wikipediaさん)
◆ eについて
e 〇 ヨウ素は、大過剰のKIが存在すると、水溶液中ではほとんどが I3−として溶存している。
ヨウ素分子(I2)は水に溶けにくい。しかし、ヨウ化カリウムなどのI−を生成するものを添加し、大過剰のI−が存在する状態にすると、水中でI2とI−が反応し、I3−となり、ヨウ素が水に溶けるようになる。
★参考外部サイトリンク
ヨウ素(wikipediaさん)