ヨウ素とその化合物 薬学無機化学 薬剤師国家試験86回問3
第86回薬剤師国家試験 問3
ヨウ素に関する記述の正誤を判定してみよう。
1.ヨウ素分子は常温で揮散すると、その蒸気は無臭で紫色である。
2.水中でヨウ素分子の一部は、次亜ヨウ素酸(HIO)とヨウ化水素酸(HI)になる。
3.ヨウ素分子は、ポビドン (polyvinyl-pyrrolidone) と複合体を形成し、その複合体はポビドンヨードとして殺菌・消毒薬として用いられる。
4.水溶液中でヨウ素分子は、デンプンと包接化合物を作り青紫色を呈する。
第86回薬剤師国家試験 問3 解答解説
◆ 1について
1.× ヨウ素分子は常温で揮散すると、その蒸気は無臭で紫色である。
→ 〇 ヨウ素分子は常温で揮散すると、その蒸気は刺激臭で紫色である。
ヨウ素は常温では紫色の個体である。昇華して発生するヨウ素の蒸気は紫色で刺激臭がある。
★参考外部サイトリンク
ヨウ素(wikipediaさん)
◆ 2について
2.〇 水中でヨウ素分子の一部は、次亜ヨウ素酸(HIO)とヨウ化水素酸(HI)になる。
ヨウ素を水に溶かすと下記の可逆反応が起こる。平衡は左に偏っている。
★参考外部サイトリンク
次亜ヨウ素酸(wikipediaさん)
◆ 3について
3.〇 ヨウ素分子は、ポビドン (polyvinyl-pyrrolidone) と複合体を形成し、その複合体はポビドンヨードとして殺菌・消毒薬として用いられる。
ヨウ素分子(I2)は水に溶けにくいが、水溶性高分子のポビドンと複合体を形成させてポビドンヨードとすることで水溶性が増す。
★参考外部サイトリンク
ポリビニルピロリドン(wikipediaさん)
◆ 4について
4.〇 水溶液中でヨウ素分子は、デンプンと包接化合物を作り青紫色を呈する。
ヨウ素デンプン反応では、ヨウ素分子がデンプンのらせん構造の中心に取り込まれて包接化合物が形成されるのに伴い、包接化合物が独自に光を吸収することで(新たな光吸収バンドが出現することで)青紫色を呈する。
また、ヨウ素とデンプンによる包接化合物について、デンプンを構成するグルコース分子が電子供与体(ドナー:D)であり、ヨウ素分子が電子受容体(アクセプター:A)である電荷移動錯体(ドナー・アクセプター錯体)を形成しているともいえる。グルコースのヒドロキシ基の非共有電子対がヨウ素に供与されている。
★参考外部サイトリンク
ヨウ素デンプン反応(化学のグルメさん)