電気陰性度 薬学無機化学 薬剤師国家試験86回問6

第86回薬剤師国家試験 問6
次の電気陰性度に関する記述の正誤を判定してみよう。

 

a ハロゲンの中で最も電気陰性度が大きいのはヨウ素原子である。

 

b 水素化ナトリウムでは水素の方がナトリウムより電気陰性度が大きく、したがって水素は負に分極している。

 

c カリウム原子は、リチウム原子より電気陰性度が大きい。

 

d 臭化メチルにおいては、炭素より臭素の方が電気陰性度が大きく、したがってメチル基の炭素は正に分極している。

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第86回薬剤師国家試験 問6 解答解説

 

◆ aについて
a × ハロゲンの中で最も電気陰性度が大きいのはヨウ素原子である。
→ 〇 ハロゲンの中で最も電気陰性度が大きいのはフッ素原子である。

 

一般に電気陰性度は周期表の右または上にある原子ほど大きい。
17族のハロゲン同士の電気陰性度の比較では、上の周期にある方が電気陰性度が大きい。
よって、電気陰性度が大きい方から、
F > Cl > Br > I となる。

 

原子の電気陰性度は分子の極性を考える上で重要である。
下記に示す原子の電気陰性度の大まかな値を覚え、炭素との差が計算できるようになると、分子における分極の度合がイメージできるようになり、化学反応が理解しやすくなる。
F(4.0)>O(3.5)>Cl(3.2)>N(3.0)>Br(3.0)>I(2.7)>S(2.6)>C(2.5)>H(2.2)

 

★参考外部サイトリンク
電気陰性度とは(理系ラボさん)

 

 

◆ bについて
b 〇 水素化ナトリウムでは水素の方がナトリウムより電気陰性度が大きく、したがって水素は負に分極している。

 

+δNa−Hδ‐ (δはデルタと読む)
2つの原子が共有結合をしているとき、電気陰性度が相対的に大きい原子が共有電子対を自身の方へ引っ張ることで負に分極し、電気陰性度が小さい方は共有電子対が相手に引っ張られているので正に分極する。

 

 

◆ cについて
c × カリウム原子は、リチウム原子より電気陰性度が大きい。
→ 〇 カリウム原子は、リチウム原子より電気陰性度が小さい。

 

カリウムとリチウムはどちらも周期表の第1族元素である。
リチウムの方がカリウムより上の周期にあるので、リチウムの方が電気陰性度が大きい。

 

★参考外部サイトリンク
第1族元素(wikipediaさん)

 

 

◆ dについて
d 〇 臭化メチルにおいては、炭素より臭素の方が電気陰性度が大きく、したがってメチル基の炭素は正に分極している。

 

H3CBrでは、
+δC−Brδ‐
というように分極している。

 

炭素の分極と求核反応の起こりやすさについて、
臭化メチルの炭素のように、電気陰性度の大きい原子が結合し、
大きくδ+に分極している炭素は求核攻撃を受けやすくなる。

 

★参考外部サイトリンク
ハロアルカンの性質と求核置換反応(生命系のための理工学基礎さん)

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