アルケン 臭素(ハロゲン)付加 98回薬剤師国家試験問103の2
第98回薬剤師国家試験 問103の2
AとBはそれぞれ互いに異性体である。以下の反応について、どちらが主生成物であるか判定してみよう。
第98回薬剤師国家試験 問103の2 解答解説
★ アルケンの求電子付加反応
アルケンのC=Cはσ結合の上下にπ結合の電子雲が広がっているので、アルケンは電子豊富な構造である。
電子豊富なアルケンは求電子試薬と反応し、求電子付加反応を起こすことが多い。
設問の反応について、
2の反応はアルケンに対するハロゲン分子(X2)の付加反応であり、アルケンのC=Cに対して2つのハロゲン(X)がanti付加(trans付加)したジハロゲン化物が生成する。
したがって、2の反応ではBが主生成物となる。
反応2は下記のように進む。
シクロヘキセンに臭素分子(Br2)を反応させると2つのBrがanti付加し、上の図の(R,R)または(S,S)のジブロモ化合物が生成する。これらは互いに鏡像異性体(エナンチオマー)の関係にある。
よって、2の反応の生成物は互いに鏡像異性体(エナンチオマー)の関係にあるものの等量混合物であるラセミ体となる。
★ アルケンに対するハロゲン分子(X2)の求電子付加がanti付加である理由
まず、ハロゲン分子(X2)のうちの正に分極したX(Xδ+)に対してアルケンのπ電子が供与されてXが付加し、中間体として三員環のハロゲンカチオン(X+)が生成する。
次に、三員環を構成している正に分極した炭素(Cδ+)にハロゲンアニオン(X−)が求核付加するが、X−がCδ+にアクセスする経路としてX+のいない側(X+がいる方とは逆側)の方がアクセスしやすい。
X+が上に付加しているならX−は下に付加し、X+が下にいるならX−は上に付加する。
このことから、2つのXがanti付加(trans付加)することになる。