コロイド分散系の性質に関する記述 104回薬剤師国家試験問171

104回薬剤師国家試験 問171
コロイド分散系の性質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 疎水コロイドの安定性は、粒子間のファンデルワールス引力と静電反発力の総和で評価できる。
2 疎水コロイドに電解質が共存すると粒子表面の電気二重層は厚くなり、分散状態は不安定となる。
3 疎水コロイドの電荷と反対符号のイオンの価数が大きくなるほど、凝析価(mol/L)は大きくなる。
4 親水コロイドに対する同濃度の1価陽イオンの塩析作用の強さは、K+ > Na+ > Li+ である。
5 親水性の高分子コロイドにアルコールを添加すると、コロイドに富む液相と乏しい液相の2つに分離するコアセルベーションが起こる。

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104回薬剤師国家試験 問171 解答解説

 

◆ 1について
1 〇 疎水コロイドの安定性は、粒子間のファンデルワールス引力と静電反発力の総和で評価できる。

 

粒子間のファンデルワールス引力と静電反発力の総和は粒子間の相互作用ポテンシャルエネルギーとして表され、疎水コロイドの安定性の評価に用いられる。

 

 

◆ 2について
2 × 疎水コロイドに電解質が共存すると粒子表面の電気二重層は厚くなり、分散状態は不安定となる。
→ 〇 疎水コロイドに電解質が共存すると粒子表面の電気二重層は薄くなり、分散状態は不安定となる。

 

疎水コロイドの粒子表面には電気二重層が形成されており、
この層がコロイド粒子間に静電反発力を生じさせ、凝集を抑制することで、分散状態の安定に寄与している。
疎水コロイドに電解質を添加すると、
電解質の電荷によりコロイド粒子表面の電気二重層の電荷が中和され、
コロイド粒子間の静電反発力が小さくなり、凝集しやすくなるので、分散状態は不安定となる。

 

関連問題
疎水コロイドの電解質添加による沈殿と静電的反発力 96回問21b

 

 

◆ 3について
3 × 疎水コロイドの電荷と反対符号のイオンの価数が大きくなるほど、凝析価(mol/L)は大きくなる。
→ 〇 疎水コロイドの電荷と反対符号のイオンの価数が大きくなるほど、凝析価(mol/L)は小さくなる。

 

疎水コロイド液に電解質を添加していくと、疎水コロイド粒子同士の凝集が進み、いずれ析出して白濁(凝析)する。
疎水コロイド粒子を凝析させるのに要する電解質の最小濃度を凝析価という。
疎水コロイドの電荷と反対符号のイオンの価数が大きくなるほど、凝析価(mol/L)は小さくなる。

 

 

◆ 4について
4 × 親水コロイドに対する同濃度の1価陽イオンの塩析作用の強さは、K+ > Na+ > Li+ である。
→ 〇 親水コロイドに対する同濃度の1価陽イオンの塩析作用の強さはLi+ > Na+ > K+ である。

 

詳細は下記のリンク先を参照
親水コロイドに対する1価陽イオンの塩析作用の強さ 104回問171の4

 

 

◆ 5について
5 〇 親水性の高分子コロイドにアルコールを添加すると、コロイドに富む液相と乏しい液相の2つに分離するコアセルベーションが起こる。

 

高分子溶液において、
高分子の濃厚な液相と希薄な液相に分離することをコアセルベーションと呼ぶ。
親水性の高分子コロイドにアルコール等の水溶性有機溶媒を添加すると、高分子コロイドの水和水が引き抜かれ、高分子粒子同士が凝集して沈殿する。これはコアセルベーションの1種である。
他、コアセルベーションを起こす手法として、高分子の均一溶液の温度を徐々に下げる、高分子の貧溶媒(相性の悪い溶媒)を加え続ける、塩を添加して塩析を起こすことなどが挙げられる。

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
104回問171(e-RECさん)

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