コロイド粒子間相互作用のポテンシャルエネルギーと粒子間距離 94回薬剤師国家試験問21

94回薬剤師国家試験 問21
下図の曲線 (1)〜(3) は、異なる添加塩濃度におけるコロイド粒子間相互作用のポテンシャルエネルギーと粒子間距離との関係を示している。ただし、(1) 及び (2) の極大点でのポテンシャルエネルギーは粒子の熱運動エネルギーより十分大きい。疎水コロイドの安定性に関する記述のうち、正しいものはどれか。

 

コロイド粒子間相互作用のポテンシャルエネルギーと粒子間距離 94回薬剤師国家試験問21

 

a (1) では、コロイド粒子の凝集が容易に起こる。
b (2) では、凝集したコロイド粒子は振とうによって再分散させることができる。
c (3) は、添加塩の濃度が最も大きい。
d 添加塩の濃度が増加すると、コロイド粒子間の静電反発力が強まる。

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題集 コロイド 一覧へ

 

 

94回薬剤師国家試験 問21 解答解説

 

◆ aについて
コロイド粒子間相互作用のポテンシャルエネルギーと粒子間距離 94回薬剤師国家試験問21

 

a × (1) では、コロイド粒子の凝集が容易に起こる。
b 〇 (2) では、凝集したコロイド粒子は振とうによって再分散させることができる。

 

(1)と(2)ではコロイド粒子の凝集は起こりにくい。
(3)ではコロイド粒子の凝集が容易に起こる。

 

以下、詳細

 

DLVO理論によると、
粒子間の全相互作用ポテンシャルエネルギーは、
粒子間のファンデルワールス引力のポテンシャルエネルギーと
静電反発力のポテンシャルエネルギーの総和に等しい。
設問の図において、全相互作用ポテンシャルエネルギーが0以上の場合、
コロイド粒子間でファンデルワールス引力よりも静電反発力の方が強いことを示す。
図の(1)や(2)のグラフのように、全相互作用ポテンシャルエネルギーが極大を有し、かつ、0以上の領域を有するということは、ファンデルワールス引力よりも静電反発力の方が強くなるコロイド粒子間距離が存在することを示す。
極大点の山がコロイド粒子同士を接近させる熱運動エネルギーより十分高ければ、
コロイド粒子同士が凝集しにくく、分散状態を維持しやすい。
また、この場合、コロイド粒子が凝集しても、振とうによって再分散させることができる。

 

なお、(3)では、どの粒子間距離でも全相互作用ポテンシャルエネルギーは0以下であり、
これはコロイド粒子間で常に静電反発力よりもファンデルワールス引力の方が強いことを示す。
この場合、コロイド粒子の凝集が容易に起こる。

 

 

◆ c,dについて
コロイド粒子間相互作用のポテンシャルエネルギーと粒子間距離 94回薬剤師国家試験問21

 

c 〇 (3) は、添加塩の濃度が最も大きい。
全相互作用ポテンシャルエネルギーは大きい方から(1)>(2)>(3)なので、
添加塩濃度は大きい方から(3)>(2)>(1)である。

 

d × 添加塩の濃度が増加すると、コロイド粒子間の静電反発力が強まる。
→ 〇 添加塩の濃度が増加すると、コロイド粒子間の静電反発力が弱まる。

 

疎水コロイドに電解質を添加すると、
電解質の電荷によりコロイド粒子表面の電気二重層の電荷が中和され、
コロイド粒子間の静電反発力が小さくなり、凝集しやすくなる。
よって、添加塩の濃度が高いほど、
コロイド粒子間の静電反発力は弱くなり、
全相互作用ポテンシャルエネルギーは小さくなる。
したがって、(1)〜(3)の中では、
(3)の全相互作用ポテンシャルエネルギーが最も小さいので、
(3)は添加塩の濃度が最も大きいと考えられる。

トップへ戻る