コロイド分散系に関する記述 96回薬剤師国家試験問21
96回薬剤師国家試験 問21
コロイド分散系に関する記述のうち、正しいものはどれか。
a コロイド粒子のブラウン運動は、コロイド粒子どうしの無秩序な衝突によって起こる。
b 少量の電解質を添加すると疎水コロイドが凝集し沈殿するのは、コロイド粒子間の静電的反発力が増加するためである。
c 限外顕微鏡は、コロイド粒子のチンダル現象を利用したものである。
d タンパク質などの親水コロイドは、アルコールなどの脱水剤や少量の電解質を添加すると、凝集し沈殿する。
96回薬剤師国家試験 問21 解答解説
◆ aについて
a × コロイド粒子のブラウン運動は、コロイド粒子どうしの無秩序な衝突によって起こる。
→ 〇 コロイド粒子のブラウン運動は、分散媒分子がコロイド粒子に衝突することによって起こる。
分散媒分子(溶媒分子)が熱運動をすることによりコロイド粒子に衝突し、コロイド粒子が不規則な運動をすることをブラウン運動と呼ぶ。
コロイド粒子はブラウン運動をするので沈降しない。
ブラウン運動が激しくなると、コロイド粒子は不安定になる。
◆ bについて
b × 少量の電解質を添加すると疎水コロイドが凝集し沈殿するのは、コロイド粒子間の静電的反発力が増加するためである。
→ 〇 少量の電解質を添加すると疎水コロイドが凝集し沈殿するのは、コロイド粒子間の静電的反発力が低下するためである。
疎水コロイドの粒子表面には電気二重層が形成されており、
この層がコロイド粒子間に静電反発力を生じさせ、凝集を抑制することで、分散状態の安定に寄与している。
疎水コロイドに少量の電解質を添加すると、
電解質の電荷によりコロイド粒子表面の電気二重層の電荷が中和され、
コロイド粒子間の静電反発力が小さくなるので、コロイド粒子同士が凝集し、析出して白濁(凝析)する。
関連問題
疎水コロイドに電解質が共存することによる電気二重層と分散状態の変化 104回問171の2,3
◆ cについて
c 〇 限外顕微鏡は、コロイド粒子のチンダル現象を利用したものである。
コロイド溶液に横から光を当てると、コロイド粒子が光を散乱することにより、光の道が見える。
これをチンダル現象と呼ぶ。
限外顕微鏡は、コロイド粒子のチンダル現象を利用したものである。
◆ dについて
d × タンパク質などの親水コロイドは、アルコールなどの脱水剤や少量の電解質を添加すると、凝集し沈殿する。
→ 〇 タンパク質などの親水コロイドは、アルコールなどの脱水剤と少量の電解質を併用で添加すると、凝集し沈殿する。
親水コロイドに多量の電解質を添加すると、
親水コロイド表面において、水和層の脱水と電荷の中和が起こり、親水コロイド粒子同士が凝集し、析出して白濁(凝析)する。
これを塩析と呼ぶ。
また、親水コロイドに対して、少量の電解質とアルコール等の脱水剤を併用で添加することでも、同様に親水コロイド粒子同士が凝集して沈殿する。
問題文のように単独で脱水剤もしくは少量の電解質を添加しても親水コロイドの凝集沈殿は起こらない。