コロイド粒子間に働く相互作用ポテンシャルエネルギーの概略図 90回薬剤師国家試験問21

90回薬剤師国家試験 問21
分散コロイドの一種である疎水コロイドの安定性は、主に静電反発力とファンデルワールス力によって決まる。コロイド粒子間に働く相互作用ポテンシャルエネルギーの概略図を下に示す。静電反発力による相互作用ポテンシャルエネルギーは添加塩濃度の違いにより VR1、VR2、VR3で示される。ファンデルワールス力による相互作用ポテンシャルエネルギーをVAとすると、各々の総相互作用ポテンシャルエネルギーはVT1、VT2、 VT3で示される。次の記述の正誤について、正しいものはどれか。

 

コロイド粒子間に働く相互作用ポテンシャルエネルギーの概略図 90回薬剤師国家試験問21

 

a 粒子間のファンデルワールス力は分子間のそれより遠くまで働く。
b VT1のように、総相互作用ポテンシャルエネルギーが極大を有する場合はコロイド粒子は不安定である。
c 添加塩を増加していくと、静電反発力による相互作用ポテンシャルエネルギーはVR3、VR2、VR1の順に大きくなる。
d 添加塩を増加していくと、総相互作用ポテンシャルエネルギーは VT1、VT2、VT3と変化する。VT3の場合、コロイド粒子は不安定となり凝集する。

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90回薬剤師国家試験 問21 解答解説

 

◆ aについて
a 〇 粒子間のファンデルワールス力は分子間のそれより遠くまで働く。

 

コロイド粒子間に働くファンデルワールス力は遠距離相互作用である。
なお、一般の分子間に働くファンデルワールス力は近距離相互作用である。

 

 

◆ bについて
コロイド粒子間に働く相互作用ポテンシャルエネルギーの概略図 90回薬剤師国家試験問21

 

b × VT1のように、総相互作用ポテンシャルエネルギーが極大を有する場合はコロイド粒子は不安定である。

 

一般に、VT1のように、総相互作用ポテンシャルエネルギーが極大を有する場合はコロイド粒子は安定である。
DLVO理論によると、
粒子間の全相互作用ポテンシャルエネルギー(VT)は、
粒子間のファンデルワールス引力のポテンシャルエネルギー(VA)と
静電反発力のポテンシャルエネルギー(VR)の総和に等しい。
設問の図において、全相互作用ポテンシャルエネルギーが0以上の場合、
コロイド粒子間でファンデルワールス引力よりも静電反発力の方が強いことを示す。
VT1やVT2のように、全相互作用ポテンシャルエネルギーが極大を有し、かつ、0以上の領域を有するということは、ファンデルワールス引力よりも静電反発力の方が強くなるコロイド粒子間距離が存在することを示す。
極大点の山がコロイド粒子同士を接近させる熱運動エネルギーより十分高ければ、
コロイド粒子同士が凝集しにくく、分散状態を維持しやすい。
一般に、VT1のように、総相互作用ポテンシャルエネルギーが極大を有する場合、コロイド粒子は凝集しにくく、安定である。

 

 

◆ c,dについて
コロイド粒子間に働く相互作用ポテンシャルエネルギーの概略図 90回薬剤師国家試験問21

 

c × 添加塩を増加していくと、静電反発力による相互作用ポテンシャルエネルギーはVR3、VR2、VR1の順に大きくなる。
→ 〇 添加塩を増加していくと、静電反発力による相互作用ポテンシャルエネルギーはVR1、VR2、VR3の順に小さくなる。

 

d 〇 添加塩を増加していくと、総相互作用ポテンシャルエネルギーは VT1、VT2、VT3と変化する。VT3の場合、コロイド粒子は不安定となり凝集する。

 

疎水コロイドの粒子表面には電気二重層が形成されており、
この層がコロイド粒子間に静電反発力を生じさせ、凝集を抑制することで、分散状態の安定に寄与している。
疎水コロイドに電解質を添加すると、
電解質の電荷によりコロイド粒子表面の電気二重層の電荷が中和され、
コロイド粒子間の静電反発力が小さくなり、凝集しやすくなる。
よって、設問の図において、添加塩を増加していくと、
静電反発力による相互作用ポテンシャルエネルギーはVR1、VR2、VR3の順に小さくなり、
総相互作用ポテンシャルエネルギーは VT1、VT2、VT3と変化する。
VT3では、総相互作用ポテンシャルエネルギーはどの粒子間距離でも負であり、これは静電反発力よりもファンデルワールス引力の方が強いことを示しており、この場合、コロイド粒子は不安定となり凝集する。

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