コロイド分散系に関する記述 88回薬剤師国家試験問22

88回薬剤師国家試験 問22
コロイド分散系に関する記述の正誤について、正しいものはどれか。

 

a 限外顕微鏡は、コロイド粒子のチンダル現象を利用したものである。
b コロイド粒子のブラウン運動は、コロイド粒子どうしの無秩序な衝突によって起こり、コロイド粒子は、一般にろ紙や半透膜を通過する。
c 疎水コロイドに少量の電解質を添加すると、凝集し沈殿する。これを凝析という。これは静電的反発力が増加し、ファンデルワールス力が支配する距離まで接近するためである。
d タンパク質などの親水コロイドは、アルコールなどの脱水剤と少量の電解質を添加すると、凝集し沈殿する。これを塩析という。
e 互いに反対符号に帯電した水溶性高分子コロイドの静電的相互作用を利用して、マイクロカプセルを調製することができる。

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88回薬剤師国家試験 問22 解答解説

 

◆ aについて
a 〇 限外顕微鏡は、コロイド粒子のチンダル現象を利用したものである。

 

コロイド溶液に横から光を当てると、コロイド粒子が光を散乱することにより、光の道が見える。
これをチンダル現象と呼ぶ。
限外顕微鏡は、コロイド粒子のチンダル現象を利用したものである。

 

 

◆ bについて
b × コロイド粒子のブラウン運動は、コロイド粒子どうしの無秩序な衝突によって起こり、コロイド粒子は、一般にろ紙や半透膜を通過する。

 

分散媒分子(溶媒分子)が熱運動をすることによりコロイド粒子に衝突し、コロイド粒子が不規則な運動をすることをブラウン運動と呼ぶ。
コロイド粒子の粒子径は1nm〜1μmであるが、
一般に、コロイド粒子はろ紙を通過するが、半透膜は通過しない。

 

 

◆ cについて
c × 疎水コロイドに少量の電解質を添加すると、凝集し沈殿する。これを凝析という。これは静電的反発力が増加し、ファンデルワールス力が支配する距離まで接近するためである。

 

→ 〇 疎水コロイドに少量の電解質を添加すると、凝集し沈殿する。これを凝析という。これは静電的反発力が低下し、ファンデルワールス力が支配する距離まで接近するためである。

 

 

疎水コロイドの粒子表面には電気二重層が形成されており、
この層がコロイド粒子間に静電反発力を生じさせ、凝集を抑制することで、分散状態の安定に寄与している。
疎水コロイドに少量の電解質を添加すると、
電解質の電荷によりコロイド粒子表面の電気二重層の電荷が中和され、
コロイド粒子間の静電反発力が小さくなるので、コロイド粒子同士が凝集し、析出して白濁(凝析)する。

 

 

◆ dについて
d × タンパク質などの親水コロイドは、アルコールなどの脱水剤と少量の電解質を添加すると、凝集し沈殿する。これを塩析という。

 

親水コロイドに多量の電解質を添加すると、
親水コロイド表面において、水和層の脱水と電荷の中和が起こり、親水コロイド粒子同士が凝集し沈殿する。これを塩析と呼ぶ。
なお、親水コロイドは、アルコールなどの脱水剤と少量の電解質を併用で添加することでも、コロイド粒子同士が凝集し沈殿するが、これを塩析とは呼ばない。

 

 

◆ eについて
e 〇 互いに反対符号に帯電した水溶性高分子コロイドの静電的相互作用を利用して、マイクロカプセルを調製することができる。

 

高分子溶液について、
高分子の希薄な相と濃厚な相に分離することをコアセルベーションと呼ぶ。
コアセルベーションはマイクロカプセルの調整に利用されている。
互いに反対符号に帯電した水溶性高分子コロイドを反応させると、互いの電荷が中和され、溶解性が低下する。これによりコアセルベーションが起こる。
なお、マイクロカプセルとは、通例、直径数μm〜数百μmの大きさで、薬物を芯物質としてこれを高分子膜などで被覆したもので、薬物の安定化や放出制御に利用される。

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