バイオ医薬品の微粒子製剤の水への分散性 109回薬剤師国家試験問182

109回薬剤師国家試験 問182
バイオ医薬品の微粒子製剤の水への分散性を、ゼータ電位と平均粒子径から評価した。下図の異なるpHにおける結果に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。ただし、一次粒子の粒子径はpH により変化せず、温度は一定とする。また、粒度分布は一峰性で十分小さく、粒子の凝集は可逆的とする。

 

109回薬剤師国家試験問182 バイオ医薬品の微粒子製剤の水への分散性

 

1 pH 2で分散粒子は正に帯電している。
2 pH 5付近で最も凝集性が高い。
3 pH 6付近で粒子表面は電気的に中性である。
4 pH 8以上で粒子は凝析している。
5 塩を加えることでpHによらず分散性を改善できる。

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109回薬剤師国家試験 問182 解答解説

 

バイオ医薬品の有効成分はタンパク質であり、
一般に、タンパク質の水溶液は親水コロイドである。
よって、本問は、親水コロイド粒子の水への分散性とpHの関係についての問題である。

 

ゼータ電位は分散性の指標である。
ゼータ電位の絶対値が大きいほど、粒子間の静電反発力が強く、粒子同士が凝集しにくいので、分散性は高い。
ゼータ電位の絶対値が小さいほど、粒子間の静電反発力が弱く、粒子同士が凝集しやすいので、分散性は低い。

 

109回薬剤師国家試験問182 バイオ医薬品の微粒子製剤の水への分散性

 

◆ 1,2,3について
1 〇 pH 2で分散粒子は正に帯電している。

 

2 〇 pH 5付近で最も凝集性が高い。

 

3 × pH 6付近で粒子表面は電気的に中性である。
→ 〇 pH 6付近では、粒子表面は負に帯電しやすい。

 

設問の図より、
pH5付近でゼータ電位の絶対値が0、かつ、平均粒子径が最大となっている。
このことから、本問のタンパク質の等電点は5付近であり、
pH5付近でタンパク質粒子の実効電荷が0となり、粒子間の静電反発力が小さくなり、粒子同士が凝集したと考えられる。

 

本問のタンパク質は、等電点が5付近であることから、
pHが5より低いと、粒子は正に帯電しやすくなり、
pHが5より高いと、粒子は負に帯電しやすくなる。

 

 

◆ 4について
4 × pH 8以上で粒子は凝析している。

 

凝析とは、溶液中で粒子同士の凝集が進み、粒子が析出した状態を指す。
pH8以上では、ゼータ電位の絶対値が大きく、平均粒子径が小さいので、
粒子は凝析していないと考えられる。

 

 

◆ 5について
5 × 塩を加えることでpHによらず分散性を改善できる。

 

親水コロイドに多量の塩を加えると、
塩が電離して生成するイオンにより、
親水コロイド粒子表面の水和層が除去され、かつ、
粒子表面の電荷が中和されて静電反発力が小さくなるので、
粒子同士が凝集しやすくなり、分散性は悪化すると考えられる。

 

なお、親水コロイドに多量の塩を加えることで、
親水コロイド粒子同士の凝集が進み、析出することを塩析と呼ぶ。

 

関連問題
親水コロイドの塩析とは 88回問22d

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