希薄溶液の束一的性質 104回薬剤師国家試験問99

104回薬剤師国家試験 問99
希薄溶液の束一的性質に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

1 蒸気圧降下は、束一的性質の1つである。
2 電解質溶液は、束一的性質を示さない。
3 浸透圧に関するファントホッフの式は、浸透圧と溶液の粘度の関係を示す。
4 0.05mol/L ブドウ糖水溶液の沸点上昇度と凝固点降下度は等しい。
5 同じモル濃度であれば、ブドウ糖とショ糖の水溶液の浸透圧は等しい。

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題集 束一的性質 一覧へ

 

 

104回薬剤師国家試験 問99 解答解説

 

◆ 1について
1 〇 蒸気圧降下は、束一的性質の1つである。

 

不揮発性の溶質が溶解した希薄溶液において、
溶質の種類には無関係に、
溶質の粒子数のみに依存する溶液の性質を束一的性質と呼ぶ。
束一的性質として、沸点上昇,凝固点降下,蒸気圧降下,浸透圧上昇がある。
なお、束一的性質は、溶質が溶解することにより、
溶媒分子の化学ポテンシャルが低下することから生じる。

 

 

◆ 2について
2 × 電解質溶液は、束一的性質を示さない。
不揮発性の溶質が溶解した希薄溶液ならば、
溶質が電解質溶液でも非電解質でも束一的性質を示す。

 

 

◆ 3について
3 × 浸透圧に関するファントホッフの式は、浸透圧と溶液の粘度の関係を示す。

 

ファントホッフの式によると、
浸透圧Πは下記のように表される。

 

Π = i・ c・R・T
i:ファントホッフ係数 c:モル濃度
R:気体定数 T:絶対温度

 

上式より、浸透圧に関するファントホッフの式は、
浸透圧と溶液の濃度および絶対温度の関係を示す。

 

なお、ファントホッフ係数(i)とは、
溶質の解離や会合による粒子数の増減を考慮するための係数である。

 

・解離により粒子数が増える場合のファントホッフ係数
電離度をα,1分子が解離して生成するイオンの数をnとすると、
ファントホッフ係数について次式が成り立つ。
i = 1−α + nα = 1 +α (n−1)

 

・会合により粒子数が減少する場合のファントホッフ係数
平均分子会合度をPとすると、
ファントホッフ係数について次式が成り立つ。
i = 1/P

 

 

◆ 4について
4 × 0.05mol/L ブドウ糖水溶液の沸点上昇度と凝固点降下度は等しい。

 

沸点上昇度(凾sb)は次式で表される。
b = i・Kb・mB
i:ファントホッフ係数 Kb:モル沸点上昇定数
mB:質量モル濃度

 

凝固点降下度(儺f)は次式で表される。
f = i・Kf・mB
i:ファントホッフ係数 Kf:モル凝固点降下定数
mB:質量モル濃度

 

モル沸点上昇定数(Kb)とモル凝固点降下定数(Kf)の値は異なるので、
0.05mol/L ブドウ糖水溶液の沸点上昇度と凝固点降下度は異なる。

 

なお、モル沸点上昇定数(Kb)とモル凝固点降下定数(Kf)の値は溶媒に固有の値である。

 

◆ 5について
5 〇 同じモル濃度であれば、ブドウ糖とショ糖の水溶液の浸透圧は等しい。

 

ファントホッフの式によると、
浸透圧Π(パイ)は下記のように表される。

 

Π = i・ c・R・T
i:ファントホッフ係数 c:モル濃度
R:気体定数 T:絶対温度

 

ブドウ糖とショ糖は解離や会合による粒子数の増減が無いため、
どちらもファントホッフ係数(i)は1である。
したがって、
同じモル濃度であれば、ブドウ糖とショ糖の水溶液の浸透圧は等しい。

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
104回問99(e-RECさん)

トップへ戻る