溶質が形成する浸透圧の計算 98回薬剤師国家試験問197

98回薬剤師国家試験 問197
腎臓のヘンレ係蹄上行脚におけるNa+、Cl−の再吸収により、髄質間質に高浸透圧が形成される。
生理的状態における髄質間質の塩化ナトリウム(式量:58.4)濃度は29g/L、尿素(分子量:60.1)濃度は12g/Lである。これら溶質が形成する浸透圧(Pa(N/m2))に最も近いのはどれか。1つ選びなさい。ただし、間質の体液は理想状態にあり、気体定数は8.31(J・mol−1・K−1)、体温は37℃とし、塩化ナトリウムは完全に解離状態にあるとする。

 

1 1.8×104
2 1.8×105
3 3.1×105
4 1.8×106
5 3.1×106

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98回薬剤師国家試験 問197 解答解説

 

正解は5の3.1×106である。

 

ファントホッフの式によると、
浸透圧Πは下記のように表される。

 

Π = i・ c・R・T
i:ファントホッフ係数 c:モル濃度
R:気体定数 T:絶対温度

 

ファントホッフ係数(i)とは、
溶質の解離や会合による粒子数の増減を考慮するための係数である。

 

・解離により粒子数が増える場合のファントホッフ係数
電離度をα,1分子が解離して生成するイオンの数をnとすると、
ファントホッフ係数について次式が成り立つ。
i = 1−α + nα = 1 +α (n−1)

 

・会合により粒子数が減少する場合のファントホッフ係数
平均分子会合度をPとすると、
ファントホッフ係数について次式が成り立つ。
i = 1/P

 

 

本問では、髄質間質の塩化ナトリウムと尿素による浸透圧をそれぞれ求めて合計すればよい。

 

 

◆ 塩化ナトリウムが形成する浸透圧
塩化ナトリウムは完全解離する。
よって、塩化ナトリウムのファントホッフ係数(i)について、
電離度は1,1分子が解離して生成するイオンの数は2なので、
i = 1 +α (n−1) = 1 + 1・(2−1) = 2
である。
塩化ナトリウムの式量は58.4,濃度は29g/L,体温は37℃であることから、
塩化ナトリウムによる浸透圧(ΠNaCl)は下記のように計算される。

 

溶質が形成する浸透圧の計算 98回薬剤師国家試験問197

 

 

◆ 尿素が形成する浸透圧
本問では、尿素は解離または会合しないと考えてよいので、
尿素のファントホッフ係数は1である。
尿素の分子量は60.1,濃度は12g/L,体温は37℃であることから、
尿素による浸透圧(Π尿素)は下記のように計算される。

 

溶質が形成する浸透圧の計算 98回薬剤師国家試験問197

 

以上より、
塩化ナトリウムと尿素が形成する浸透圧は下記のように計算される。
ΠNaCl + Π尿素 = 2558×103 Pa + 514×103 Pa = 3072 ×103 Pa ≒ 3.1×106Pa

 

 

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