電離度αの一塩基性酸の薬物の等張モル濃度 87回薬剤師国家試験問176
87回薬剤師国家試験 問176
血清の氷点降下度をa,非電解質のモル氷点降下度をbとする。このとき,電離度αの一塩基性酸の薬物の等張モル濃度を正しく表しているものはどれか。
1 a/b(1−α)
2 a/b(1+α)
3 b/a(1−α)
4 b/a(1+α)
5 1−α/b−a
87回薬剤師国家試験 問176 解答解説
正解は2のa/b(1+α)である。
凝固点降下度(儺f)は次式で表される。
儺f = i・Kf・mB
i:ファントホッフ係数 Kf:モル凝固点降下定数
mB:質量モル濃度
モル凝固点降下定数(Kf)は溶媒に固有の値であり、
本問では氷点降下度なので、水の値(Kf,水)となる。
ファントホッフ係数(i)とは、
溶質の解離や会合による粒子数の増減を考慮するための係数である。
・解離により粒子数が増える場合のファントホッフ係数
電離度をα,1分子が解離して生成するイオンの数をnとすると、
ファントホッフ係数について次式が成り立つ。
i = 1−α + nα = 1 +α (n−1)
・会合により粒子数が減少する場合のファントホッフ係数
平均分子会合度をPとすると、
ファントホッフ係数について次式が成り立つ。
i = 1/P
本問は、電離度αの一塩基性酸(HA)の薬物の水溶液の凝固点降下度についての問いである。
一塩基性酸(HA)は下記のように電離する。
HA ⇔ H+ + A−
よって、一塩基酸1分子が解離して生成するイオンの数(n)は2である。
よって、電離度αの一塩基酸のファントホッフ係数は、
i = 1 +α (n−1) = 1 +α (2−1) = 1+α
である。
したがって、一塩基性酸(HA)の薬物の氷点降下度(儺f,HA)は下記のように表される。
儺f,HA = i・Kf,水・mB より、
儺f,HA = (1+α)・Kf,水・mB
ここで、水のモル凝固点降下定数(Kf,水)は非電解質のモル氷点降下度(b)に等しいので、
儺f,HA = (1+α)・b・mB
となる。
電離度αの一塩基性酸(HA)の薬物の水溶液が等張である場合、
次の等式が成り立つ。
血清の氷点降下度 = HAの氷点降下度(儺f,HA) より、
a = 儺f,HA = (1+α)・b・mB
mBについて整理すると、
mB = a/b(1+α)
となる。