90回薬剤師国家試験問20 希薄溶液の束一的性質
90回薬剤師国家試験 問20
希薄溶液の性質に関する記述の正誤について、正しいものはどれか。
a 希薄溶液の蒸気圧降下、沸点上昇、凝固点降下、浸透圧は束一的性質を示す。
b モル凝固点降下定数は溶媒が異なっても同じである。
c 0.01mol/Lのグルコース水溶液と0.01 mol/LのNaCl水溶液の凝固点は同じである。
d 血液の浸透圧は0.9%の食塩水の浸透圧とほぽ等しい。
90回薬剤師国家試験 問20 解答解説
◆ aについて
a 〇 希薄溶液の蒸気圧降下、沸点上昇、凝固点降下、浸透圧は束一的性質を示す。
不揮発性の溶質が溶解した希薄溶液において、
溶質の種類には無関係に、
溶質の粒子数のみに依存する溶液の性質を束一的性質と呼ぶ。
束一的性質として、沸点上昇,凝固点降下,蒸気圧降下,浸透圧上昇がある。
なお、束一的性質は、溶質が溶解することにより、
溶媒分子の化学ポテンシャルが低下することから生じる。
◆ b,cについて
b × モル凝固点降下定数は溶媒が異なっても同じである。
→ 〇 モル凝固点降下定数は溶媒によって値が異なる。
c × 0.01mol/Lのグルコース水溶液と0.01 mol/LのNaCl水溶液の凝固点は同じである。
→ 〇 0.01mol/Lのグルコース水溶液と0.01 mol/LのNaCl水溶液の凝固点は異なる。
束一的性質の凝固点降下度(儺f)は次式で表される。
儺f = i・Kf・mB
i:ファントホッフ係数 Kf:モル凝固点降下定数
mB:質量モル濃度
モル凝固点降下定数(Kf)は溶媒に固有の定数である。
ファントホッフ係数(i)とは、
溶質の解離や会合による粒子数の増減を考慮するための係数である。
・解離により粒子数が増える場合のファントホッフ係数
電離度をα,1分子が解離して生成するイオンの数をnとすると、
ファントホッフ係数について次式が成り立つ。
i = 1−α + nα = 1 +α (n−1)
・会合により粒子数が減少する場合のファントホッフ係数
平均分子会合度をPとすると、
ファントホッフ係数について次式が成り立つ。
i = 1/P
グルコースは水溶液中で解離または会合しないと考えられるので、
グルコース水溶液のファントホッフ係数は1である。
NaClは水溶液中でNa+とCl−に完全解離すると考えられるので(電離度α=1)、
NaCl水溶液のファントホッフ係数は2である。
したがって、
同じモル濃度のNaCl水溶液とグルコース水溶液では、
NaCl水溶液の方がグルコース水溶液よりも凝固点降下度は大きい。
◆ dについて
d 〇 血液の浸透圧は0.9%の食塩水の浸透圧とほぽ等しい。
0.9%食塩水(生理食塩水)や5%グルコース水溶液は血液・涙液の浸透圧とほぼ等しく、これらを等張液と呼ぶ。