93回薬剤師国家試験問17 物質の性質に関する記述
93回薬剤師国家試験 問17
物質の性質に関する記述のうち、正しいものはどれか。
a ラウール (Raoult) の法則が成立する溶液について、揮発性溶媒Aの蒸気圧降下の大きさ儕が下式で示されるのは、溶質Bが不揮発性の場合である。
儕 = P0A・XB (P0A:純溶媒Aの蒸気圧、XB:溶質Bのモル分率)
b 融点は、圧力一定のもとでの固相と液相が平衡状態にあるときの温度で、純物質の場合、物質固有の値をとるが、必ずしも凝固点と一致するとは限らない。
c 融解熱は圧力一定の場合、状態量として取り扱うことができ、固相から液相への状態変化に伴うエンタルピー変化量である。
d 非電解質の希薄水溶液の凝固点は、溶質の質量モル濃度に比例して降下し、その比例定数はモル凝固点降下定数とよばれ、溶質固有の定数である。
e H 2OがH 2Sより沸点が高いのは、酸素原子の方がイオウ原子よりも水素結合形成能が強いことに起因している。
93回薬剤師国家試験 問17
◆ aについて
a 〇 ラウール (Raoult) の法則が成立する溶液について、揮発性溶媒Aの蒸気圧降下の大きさ儕が下式で示されるのは、溶質Bが不揮発性の場合である。
儕 = P0A・XB (P0A:純溶媒Aの蒸気圧、XB:溶質Bのモル分率)
詳細は下記のリンク先を参照
ラウールの法則が成立する溶液の蒸気圧降下度 93回問17a
◆ bについて
b × 融点は、圧力一定のもとでの固相と液相が平衡状態にあるときの温度で、純物質の場合、物質固有の値をとるが、必ずしも凝固点と一致するとは限らない。
純物質の場合、融点と凝固点は必ず一致する。
◆ cについて
c 〇 融解熱は圧力一定の場合、状態量として取り扱うことができ、固相から液相への状態変化に伴うエンタルピー変化量である。
融解熱は固相から液相への状態変化に伴い系が吸収する熱である。
定圧条件下、系に出入りする熱はエンタルピー変化(僣)に等しい。
したがって、定圧条件では、
融解熱(q 融解)は融解に伴うエンタルピー変化(凾g融解)に等しい。
◆ dについて
d × 非電解質の希薄水溶液の凝固点は、溶質の質量モル濃度に比例して降下し、その比例定数はモル凝固点降下定数とよばれ、溶質固有の定数である。
モル凝固点降下定数は溶媒固有の定数である。
希薄溶液に不揮発性の溶質を溶かした溶液の凝固点降下度(儺f)は次式で表される。
儺f = i・Kf・mB
i:ファントホッフ係数 Kf:モル凝固点降下定数
mB:質量モル濃度
モル凝固点降下定数(Kf)は溶媒に固有の定数である。
◆ eについて
e 〇 H 2OがH 2Sより沸点が高いのは、酸素原子の方がイオウ原子よりも水素結合形成能が強いことに起因している。
酸素原子の方が硫黄原子よりも電気陰性度が大きいため、
酸素原子の方が水素結合能は強い。