94回薬剤師国家試験問22 溶液の束一的性質に関する記述
94回薬剤師国家試験 問22
溶液の束一的性質に関する記述のうち、正しいものはどれか。
a 希薄溶液で質量モル濃度が同じであれば、ブドウ糖水溶液の方がNaCl 水溶液よりも凝固点降下度は大きい。
b ブドウ糖希薄溶液の浸透圧Πは、Π = cRT で表される。ただし、cはモル濃度、Rは気体定数、Tは絶対温度である。
c 浸透現象は、溶液中の溶媒のモルギブズエネルギーが純粋な溶媒よりも大きいことから生じる。
d 凝固点降下度をΔTf、モル凝固点降下定数をKとすると、希薄溶液の浸透圧Πは近似的にΠ = ΔTf・R・T / K で表される。
94回薬剤師国家試験 問22 解答解説
◆ aについて
a × 希薄溶液で質量モル濃度が同じであれば、ブドウ糖水溶液の方がNaCl 水溶液よりも凝固点降下度は大きい。
→ 〇 希薄溶液で質量モル濃度が同じであれば、NaCl水溶液の方がブドウ糖水溶液よりも凝固点降下度は大きい。
凝固点降下度(儺f)は次式で表される。
儺f = i・Kf・mB
i:ファントホッフ係数 Kf:モル凝固点降下定数
mB:質量モル濃度
ファントホッフ係数(i)とは、
溶質の解離や会合による粒子数の増減を考慮するための係数である。
・解離により粒子数が増える場合のファントホッフ係数
電離度をα,1分子が解離して生成するイオンの数をnとすると、
ファントホッフ係数について次式が成り立つ。
i = 1−α + nα = 1 +α (n−1)
・会合により粒子数が減少する場合のファントホッフ係数
平均分子会合度をPとすると、
ファントホッフ係数について次式が成り立つ。
i = 1/P
ブドウ糖(グルコース)は水溶液中で解離または会合しないと考えられるので、
ブドウ糖水溶液のファントホッフ係数は1である。
NaClは水溶液中でNa+とCl−に完全解離すると考えられるので(電離度α=1)、
NaCl水溶液のファントホッフ係数は2である。
したがって、
希薄溶液で質量モル濃度が同じであれば、NaCl水溶液の方がブドウ糖水溶液よりも凝固点降下度は大きい。
◆ bについて
b 〇 ブドウ糖希薄溶液の浸透圧Πは、Π = cRT で表される。ただし、cはモル濃度、Rは気体定数、Tは絶対温度である。
ファントホッフの式によると、
浸透圧Πは下記のように表される。
Π = i・ c・R・T
i:ファントホッフ係数 c:モル濃度
R:気体定数 T:絶対温度
ブドウ糖(グルコース)は水溶液中で解離または会合しないと考えられるので、
ブドウ糖水溶液のファントホッフ係数は1である。
したがって、
ブドウ糖希薄溶液の浸透圧Πは、
Π = c・R・T
で表される。
◆ cについて
c × 浸透現象は、溶液中の溶媒のモルギブズエネルギーが純粋な溶媒よりも大きいことから生じる。
→ 〇 浸透現象は、溶液中の溶媒の化学ポテンシャルが純粋な溶媒よりも小さいことから生じる。
浸透現象は、
溶質の濃度が高いほど溶媒分子の化学ポテンシャルが低くなることから生じる。
溶媒分子の化学ポテンシャルの高い方から低い方へと溶媒分子は移動し、
両側の化学ポテンシャルが等しくなると平衡となり、移動は止まる。
また、束一的性質は全般的に、溶質が溶解することにより、
溶媒分子の化学ポテンシャルが低下することから生じる。
◆ dについて
d 〇 凝固点降下度をΔTf、モル凝固点降下定数をKとすると、希薄溶液の浸透圧Πは近似的にΠ = ΔTfRT / K で表される。
詳細は下記のリンク先を参照
浸透圧と凝固点降下度の関係 94回問22d