106回薬剤師国家試験問97 凝固点降下と浸透圧の計算

106回薬剤師国家試験 問97
分子量を求める方法に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。ただし、気体定数は8.314J・K−1・mol−1とし、水溶液の比重は1と近似できるものとする。

 

分子量は凝固点降下を利用して知ることができる。例えば、1.0%グルコース(分子量180)水溶液の凝固点降下は、水のモル凝固点降下定数を1.86 K・kg・mol−1とすると約[ ア ]K となる。一方、1.0%タンパク質(分子量18,000)水溶液の凝固点降下は約[ イ ]K となり、測定が難しい。そこで、同じく溶液の[ ウ ]性質の一つである浸透圧を上記のタンパク質溶液について測定すると、300 K において、約[ エ ]Pa となり、タンパク質のような大きな分子の分子量も浸透圧から見積もることができる。

 

1 [ ア ]にあてはまる数値は、1.0である。
2 [ イ ]にあてはまる数値は、0.001である。
3 [ ウ ]にあてはまるのは、「均一的」である。
4 [ ウ ]の性質の一つに、蒸気圧降下がある。
5 [ エ ]にあてはまる数値は、140である。

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106回薬剤師国家試験 問97 解答解説

 

◆ 1について
1 × アにあてはまる数値は、1.0である。
→ 〇 アにあてはまる数値は、0.1である。

 

アは1.0%グルコース(分子量180)水溶液の凝固点降下度である。

 

凝固点降下度(儺f)は次式で表される。
f = i・Kf・m
i:ファントホッフ係数 Kf:モル凝固点降下定数
m:質量モル濃度

 

質量モル濃度とは、溶媒1kg当たりに含まれる溶質の物質量である。
1.0%グルコース(分子量180)水溶液の質量モル濃度は次のように計算される。

 

106回薬剤師国家試験問97 凝固点降下と浸透圧の計算

 

水のモル凝固点降下定数(Kf)は1.86K・kg・mol−1であるの。
問題文にグルコースの解離や会合による粒子数の増減について特に記載がないため、
ファントホッフ係数は1として良い。
以上より、
1.0%グルコース水溶液の凝固点降下度は下記のように計算される。

 

106回薬剤師国家試験問97 凝固点降下と浸透圧の計算

 

 

◆ 2について
2 〇 イにあてはまる数値は、0.001である。

 

イは1.0%タンパク質(分子量18,000)水溶液の凝固点降下である。
問題文にタンパク質の解離や会合による粒子数の増減について特に記載がないため、
ファントホッフ係数は1として良い。
よって、求める凝固点降下度は下記のように計算される。

 

106回薬剤師国家試験問97 凝固点降下と浸透圧の計算

 

 

◆ 3,4について
3 × ウにあてはまるのは、「均一的」である。
→ 〇 ウにあてはまるのは、「束一的」である。

 

4 〇 ウの性質の一つに、蒸気圧降下がある。

 

不揮発性の溶質が溶解した希薄溶液において、
溶質の種類には無関係に、
溶質の粒子数のみに依存する溶液の性質を束一的性質と呼ぶ。
束一的性質として、沸点上昇,凝固点降下,蒸気圧降下,浸透圧上昇がある。
なお、束一的性質は、溶質が溶解することにより、
溶媒分子の化学ポテンシャルが低下することから生じる。

 

 

◆ 5について
5 × エにあてはまる数値は、140である。
→ 〇 エにあてはまる数値は、14000である。

 

エは1.0%タンパク質(分子量18,000)水溶液の300Kでの浸透圧である。

 

浸透圧Πに関する式として、
下記のファントホッフの式がある。

 

Π = i・ c・R・T
i:ファントホッフ係数 c:モル濃度
R:気体定数 T:絶対温度

 

上式を用いて、設問のタンパク質水溶液の浸透圧は下記のように計算される。

 

106回薬剤師国家試験問97 凝固点降下と浸透圧の計算

 

 

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