サリチル酸中毒の分析化学 105回薬剤師国家試験問203

105回薬剤師国家試験 問202−203
5歳男児。体重19kg。歯の痛みのため、母親が自分用として購入していた市販薬の痛み止め( 1錠当たり、アスピリン300mg、無水カフェイン25mg を含む)を2時間ごとに2錠、計5回服用させたところ、嘔吐、腹痛が出現したので受診した。受診時のサリチル酸の血中濃度は36.5 mg/dL であった。受診後は、活性炭や下剤の投与と強制利尿を行うとともに(A)の投与を行い、翌日には完治退院した。男児の肝機能及び腎機能は正常であった。

 

問202(実務)
(A)に該当する最も適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 アセチルシステイン内用液
2 イダルシズマブ(遺伝子組換え)静注液
3 炭酸水素ナトリウム注射液
4 メチルチオニニウム塩化物水和物(メチレンブルー)静注
5 亜硝酸アミル

 

 

問203(物理・化学・生物)
アスピリンは、肝臓などでサリチル酸に代謝され、腎臓で尿中へ排泄される。サリチル酸に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選びなさい。ただし、サリチル酸の代謝は無視する。

 

1 中毒患者の尿に塩化第二鉄試液を加えると赤色〜紫色に呈色することがある。
2 尿のpH が高くなると、サリチル酸の分子形の比率が増加し、排泄速度は増加する。
3 サリチル酸は活性炭に吸着する。
4 逆相分配カラムを用いるHPLC による血中サリチル酸濃度の定量分析には、試料を除タンパクすることが必要である。
5 HPLC による血中サリチル酸濃度の定量分析には、紫外可視吸光光度計を検出器として用いることが可能である。

 

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105回薬剤師国家試験問202

 

正解は3の炭酸水素ナトリウム注射液である。

 

詳細は下記のリンク先を参照
105回問202 解説

 

 

105回薬剤師国家試験問203 解答解説

 

◆ 1について
1 〇 中毒患者の尿に塩化第二鉄試液を加えると赤色〜紫色に呈色することがある。

 

アスピリン中毒患者の尿には、
代謝物のサリチル酸が排出される。

 

サリチル酸に関する記述のうち、誤っているのは…105回薬剤師国家試験問203

 

 

◆ 2について
2 × 尿のpH が高くなると、サリチル酸の分子形の比率が増加し、排泄速度は増加する。

 

尿のpHが高くなると、サリチル酸のカルボキシ基でプロトンを解離しやすくなり、イオン形の比率が増加し、尿細管での再吸収が抑制され、排泄速度は増加する。

 

一方、尿のpHが低くなると、サリチル酸のカルボキシ基でプロトンを解離しにくくなり、分子形の比率が増加し、尿細管での再吸収が促進され、排泄速度は低下する。

 

サリチル酸に関する記述のうち、誤っているのは…105回薬剤師国家試験問203

 

 

◆ 3について
3 〇 サリチル酸は活性炭に吸着する。

 

★参考外部サイトリンク
活性炭(日本中毒学会さん)

 

 

◆ 4について
4 〇 逆相分配カラムを用いるHPLC による血中サリチル酸濃度の定量分析には、試料を除タンパクすることが必要である。

 

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による血液試料の分析において、
タンパク質は分析の妨害物質となり、また、カラムを劣化させる可能性もあるので、
前処理として徐タンパクをすることが必要である。

 

 

◆ 5について
5 〇 HPLC による血中サリチル酸濃度の定量分析には、紫外可視吸光光度計を検出器として用いることが可能である。

 

紫外可視吸光光度計による分析対象となるのは、
構造中に共役系を有し、紫外可視領域の光を吸収する化合物である。

 

サリチル酸は共役系構造を有するので、
紫外可視吸光光度計を検出器として用いることができる。

 

 

★他サイトさんの解説リンク
105回問202,203(e-RECさん)

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