SDS-PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィー 103回薬剤師国家試験問119

103回薬剤師国家試験 問119
未知タンパク質Xを分離精製し、その特性を解析した。
タンパク質Xを含む細胞抽出液(試料ア)をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。
SDS-PAGEに際し、試料アにSDSと2-メルカプトエタノールを添加して前処理した(試料イ)。
図1のレーンAは分子量が25 kDa、35k Da、40k Da、55 kDaの4種の分子量マーカータンパク質を示し、レーンBは試料イを分離したときの泳動結果である。
図2は精製したタンパク質X溶液(試料ウ)と上記の4種の分子量マーカータンパク質を混合して分離したときのクロマトグラムである。
以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

SDS-PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィー 103回薬剤師国家試験問119

 

1 SDS-PAGEでは、試料イのようにタンパク質をSDSと2-メルカプトエタノールで酸化的に前処理することで分子量に基づいた分離が可能になる。
2 SDS-PAGEにおいて、タンパク質は陰極から陽極に向かって移動する。
3 タンパク質Xの分子量は、40 kDa から55 kDaの間である。
4 SECの固定相として、プロテインA固定化シリカゲルが用いられる。
5 SECによりタンパク質Xが単量体として溶出されるとき、そのピークはCである。

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103回薬剤師国家試験 問119 解答解説

 

◆ 1、2について
1 × SDS-PAGEでは、試料イのようにタンパク質をSDSと2-メルカプトエタノールで酸化的に前処理することで分子量に基づいた分離が可能になる。
→ 〇 SDS-PAGEでは、試料イのようにタンパク質をSDSと2-メルカプトエタノールで還元的に前処理することで分子量に基づいた分離が可能になる。

 

2 〇 SDS-PAGEにおいて、タンパク質は陰極から陽極に向かって移動する。

 

2−メルカプトエタノールはチオール基(−SH)を有するので還元剤であり、
タンパク質のジスルフィド結合(S−S)を還元的に切断する。

 

詳細は下記のリンク先を参照
SDS-PAGEの原理 99回問98の2

 

 

◆ 3について
3 〇 タンパク質Xの分子量は、40 kDa から55 kDaの間である。

 

SDS-PAGEでは、
大きい分子ほどゲルの網に引っかかりやすいため移動度が小さくなり、
小さい分子ほどゲルの網をすり抜けやすいため移動度が大きくなる。

 

図1のSDS-PAGEの泳動結果において、
各レーンの上の方にあるものほど、泳動距離は短く、分子量は大きいと考えられる。

 

SDS-PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィー 103回薬剤師国家試験問119

 

よって、レーンAのマーカータンパク質は、上の方にあるものから、
55 kDa、40k Da、35k Da、25 kDaと並んでいると考えられる。

 

レーンBのタンパク質Xの分子量は、
マーカータンパク質との位置関係から、
40 kDa から55 kDaの間だと考えられる。

 

なお、SDS-PAGEでは、前処理によりタンパク質の高次構造は壊れ、
サブユニット単位(単量体:モノマー)の直鎖状のペプチドとなる。
よって、設問のSDS-PAGEの結果は、タンパク質Xの単量体の分子量だと考えられる。

 

 

◆ 4について
4 × SECの固定相として、プロテインA固定化シリカゲルが用いられる。

 

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の固定相には、
多孔性のゲルが用いられる。

 

なお、プロテインA固定化シリカゲルはアフィニティークロマトグラフィーの固定相に用いられる。
アフィニティークロマトグラフィーとは、
抗原と抗体,酵素と基質,ホルモンと受容体など生物学的親和性を利用して成分を分離するクロマトグラフィーであり、
固定相に分析対象成分と生物学的に親和性のある物質を用いる。

 

★ 参考外部サイトリンク
アフィニティークロマトグラフィー(日本薬学会さん)

 

 

◆ 5について
5 × SECによりタンパク質Xが単量体として溶出されるとき、そのピークはCである。
→ 〇 SECによりタンパク質Xが単量体として溶出されるとき、そのピークはAである。

 

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の原理は
下記のリンク先を参照
サイズ排除(ゲルろ過)クロマトグラフィーの原理 97回問97の4

 

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)では、
サイズの小さい溶質は固定相ゲルの細孔に入り込むため保持時間は長く、遅く溶出し、
サイズの大きい溶質はゲルの細孔に入り込まないため保持時間は短く、速く溶出する。

 

よって、
図2のサイズ排除クロマトグラフィーの分析結果において、
保持時間の短いものほど、分子量は大きい。

 

SDS-PAGE及びサイズ排除クロマトグラフィー 103回薬剤師国家試験問119

 

SDS-PAGEの結果より、タンパク質Xの単量体の分子量は40 kDaから55 kDaの間だと推測された。
したがって、図2のサイズ排除クロマトグラフィーの結果において、
タンパク質Xの単量体のピークはAが該当すると考えられる。

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
103回問119,120(e-RECさん)

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