SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)の原理 99回薬剤師国家試験問98の2
99回薬剤師国家試験 問98の2
電気泳動法に関する下記の記述の正誤を判定してみよう。
2 SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動では、タンパク質は陽極から陰極に向かって泳動される。
99回薬剤師国家試験 問98の2 解答解説
2 × SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動では、タンパク質は陽極から陰極に向かって泳動される。
→ 〇 SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動では、
タンパク質は固有の電荷が打ち消されて一様に負電荷を帯びるので、
陰極から陽極に向かって泳動される。
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)は、
タンパク質を分子量,または,分子サイズに応じて分離する電気泳動法である。
SDS-PAGEでは、
前処理としてタンパク質試料に2-メルカプトエタノールなどの還元剤とドデシル硫酸ナトリウム(SDS)加えて加温する。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は、直鎖状のアルキル基であるドデシル基の末端に硫酸基が結合した化合物であり、界面活性剤の1種である。
還元剤により、タンパク質のジスルフィド結合(S−S)が還元的に切断され、
さらに、加温とSDSの作用でタンパク質の高次構造は壊れ、変性してサブユニット単位(単量体:モノマー)の直鎖状のペプチドとなる。
ペプチド鎖の疎水性部分に対してSDSは疎水性のドデシル基を介して疎水性相互作用で接近し、
外側に硫酸基が向くようになる。硫酸基は強酸性であるのでプロトンを解離して陰イオンとなる。
そのため、SDSの結合したペプチド鎖は固有の電荷が打ち消され、
一様に負に帯電した直鎖となる。
また、平均してタンパク質のアミノ酸残基2つあたり1分子のSDSが結合するので、
試料の質量/電荷比はほぼ一定となる。
よって、SDS-PAGEでは、
タンパク質は陽極に向かって泳動される。
SDS-PAGEでは三次元的な網目構造を持つポリアクリルアミドゲルを含む泳動液を用いるが、
大きい分子ほどゲルの網に引っかかりやすいため移動度が小さくなる。
一方、小さい分子ほどゲルの網をすり抜けやすいため移動度が大きくなる。
したがって、SDS-PAGEでは、
タンパク質は電荷によらず分子ふるい効果のみで分離される。
分離されたタンパク質はクーマシーブリリアントブルー染色や銀染色で検出される。
SDS-PAGEでは、分子量の常用対数(log10(分子量))と移動度・移動距離の間には直線性がある。
よって、SDS-PAGEはタンパク質の分子量測定に用いられる。
★ 参考外部サイトリンク
SDS-PAGEの原理(医学生物学研究所さん)