グリシンの電気泳動 pHと荷電・泳動方向 90回薬剤師国家試験問29の3
90回薬剤師国家試験 問29の3
電気泳動法に関する下記の記述の正誤を判定してみよう。
3 pH2.0の泳動液を用いてろ紙電気泳動を行うと、グリシンは負極方向に泳動される。
90回薬剤師国家試験 問29の3 解答解説
3 〇 pH2.0の泳動液を用いてろ紙電気泳動を行うと、グリシンは負極方向に泳動される。
★ グリシンにおけるpHと荷電・泳動方向の関係
・低pH
著しく低いpHにおいて、グリシンは、
カルボキシ基はプロトンを保持した分子形(−COOH)になりやすく、
アミノ基はプロトンを保持した陽イオン形(−NH3+)になりやすいため、
分子全体として正に帯電している(実効電荷+1)ものが多いと考えられる。
よって、著しく低いpHにおいて、
グリシンは陰極方向へ泳動されやすいと考えられる。
・中性付近のpH
中性付近のpHにおいて、グリシンは、
カルボキシ基はプロトンを解離した陰イオン形(−COO-)になりやすく、
アミノ基はプロトンを保持した陽イオン形(−NH3+)になりやすいため、
分子全体として電荷を帯びない(実効電荷0)ものが多いと考えられる。
よって、中性付近のpHにおいて、
グリシンは正極にも負極にも泳動されにくいと考えられる。
・高pH
著しく高いpHにおいて、グリシンは、
カルボキシ基はプロトンを解離した陰イオン形(−COO-)になりやすく、
アミノ基はプロトンを解離した陽イオン形(−NH2)になりやすいため、
分子全体として負に帯電している(実効電荷−1)ものが多いと考えられる。
よって、著しく高いpHにおいて、
グリシンは陽極方向へ泳動されやすいと考えられる。
以上より、
グリシンの電気泳動について、
pHと荷電・泳動方向を整理すると
下記のようになる。
アミノ酸の電気泳動では、
各pHにおける荷電状態を見極める必要がある。
下記のリンク先を参照
アミノ酸のpH変化に対する化学種の存在割合(存在比)の変化,等電点のまとめ