キャピラリー電気泳動の電気浸透流の原理 pH変化と泳動速度 100回薬剤師国家試験問98の1,4

100回薬剤師国家試験 問98の1,4
キャピラリー電気泳動に関する次の記述の正誤を判定してみよう。

 

1 中性の電解質溶液を満たしたフューズドシリカ製キャピラリーの内壁は、シラノール基の解離により正電荷を帯びる。

 

4 キャピラリーゾーン電気泳動では、泳動液のpHが高いほど、中性試料成分の泳動速度が遅くなる。

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100回薬剤師国家試験 問98の1,4 解答解説

 

1 × 中性の電解質溶液を満たしたフューズドシリカ製キャピラリーの内壁は、シラノール基の解離により正電荷を帯びる。
→ 〇 中性の電解質溶液を満たしたフューズドシリカ製キャピラリーの内壁は、シラノール基の解離により負電荷を帯びる。

 

4 × キャピラリーゾーン電気泳動では、泳動液のpH が高いほど、中性試料成分の泳動速度が遅くなる。
→ 〇 キャピラリーゾーン電気泳動では、泳動液のpH が高いほど、中性試料成分の泳動速度が速くなる。

 

 

キャピラリー電気泳動は、
細い内径(20〜100μm)のフューズドシリカ管(溶融シリカキャピラリー)を用いる。
フューズドシリカ製キャピラリーの内壁表面には酸性のシラノール基(Si−OH)が存在している。
泳動液のpHが3〜4以上になると、
シラノール基(Si−OH)はプロトンを解離して陰イオン(Si−O-)となるため、
キャピラリーの内壁表面は負電荷を帯び、
そこへ泳動液中の陽イオンが集まり、電気二重層を形成する。
この状態でキャピラリー両端に電圧をかけると、
内壁表面付近に集まった陽イオンが陰極に泳動されるのに伴い、
泳動液全体が陰極に向かって移動する。
これを電気浸透流と呼ぶ。
一般に、電気浸透流はイオンの泳動速度に比べて十分に速いため、
陰イオンであっても陰極端で検出される。
酸性のシラノール基(Si−OH)はpHが高いほどプロトンを解離して陰イオン(Si−O-)になりやすい。
よって、泳動液のpHが高いほど、
キャピラリー内壁表面の陰イオン形のシラノール基(Si−O-)が増え、
陽イオンが集まりやすくなり、
結果、陰極に向かう電気浸透流は速くなる。

 

関連問題
電気浸透流が発生する溶液のpHと流れの方向 96回問28b

 

★ 参考外部サイトリンク
キャピラリー電気泳動における分離(大塚電子株式会社さん)

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