電気浸透流とpH,タンパク質とSDSの結合 89回薬剤師国家試験問29

89回薬剤師国家試験 問29
電気泳動法に関する記述のうち、正しいものはどれか。

 

1 タンパク質のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動では、タンパク質はその塩基性残基の数に等しいSDS分子がイオン結合した状態で泳動される。
2 アガロースゲル電気泳動でDNAが分子サイズによって分離できるのは、DNAごとに単位電荷当りの質量が異なるからである。
3 フューズドシリカ(fused silica)製の毛細管にpH 7の電解質溶液を満たしてキャピラリー電気泳動を行った場合、正極から負極に向かう電気浸透流が発生する。
4 フューズドシリカ製の毛細管を用いた場合、電気浸透流の大きさは電解質溶液のpHに依存しない。
5 電気浸透流はキャピラリー電気泳動に特有のものであり、ろ紙電気泳動では発生しない。

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題 電気泳動一覧 へ

 

 

89回薬剤師国家試験 問29 解答解説

 

◆ 1について
1 × タンパク質のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動では、タンパク質はその塩基性残基の数に等しいSDS分子がイオン結合した状態で泳動される。

 

SDS-PAGEでは、
タンパク質の疎水性部分とSDSの疎水性部分が疎水性相互作用で接近し合っている。
平均してタンパク質のアミノ酸残基2つあたり1分子のSDSが結合する。

 

詳細は下記のリンク先を参照
SDS-PAGEの原理 99回問98の2

 

 

◆ 2について
2 × アガロースゲル電気泳動でDNAが分子サイズによって分離できるのは、DNAごとに単位電荷当りの質量が異なるからである。
→ 〇 アガロースゲル電気泳動でDNAが分子サイズによって分離できるのは、単位電荷当りの質量がDNAの種類によらず一定だからである。

 

DNAでは、ヌクレオチド1つにつきリン酸基が1つ存在し、
リン酸基はプロトンを解離して陰イオンとなっている。
よって、DNAは負に帯電し、単位電荷当たりの質量
(または単位質量当たりの電荷数)はDNAの種類によらず一定である。
そのため、アガロースゲル電気泳動ではDNAを分子サイズによって分離できる。

 

 

◆ 3について
3 〇 フューズドシリカ(fused silica)製の毛細管にpH 7の電解質溶液を満たしてキャピラリー電気泳動を行った場合、正極から負極に向かう電気浸透流が発生する。

 

詳細は下記のリンク先を参照
キャピラリー電気泳動の電気浸透流 100回問98の1,4

 

 

◆ 4について
4 × フューズドシリカ製の毛細管を用いた場合、電気浸透流の大きさは電解質溶液のpHに依存しない。

 

電気浸透流については
下記のリンク先を参照
キャピラリー電気泳動の電気浸透流 100回問98の1,4

 

フューズドシリカ製の毛細管(キャピラリー)を用いた場合、
内壁のシラノール基について陰イオンになっているものが多いほど、
陽イオンが集まりやすくなり、
電気浸透流は大きくなる。

 

酸性のシラノール基(Si−OH)はpHが高いほどプロトンを解離して陰イオン(Si−O-)になりやすい。
よって、泳動液のpHが高いほど、
キャピラリー内壁表面の陰イオン形のシラノール基(Si−O-)が増え、
陽イオンが集まりやすくなり、
結果、陰極に向かう電気浸透流は大きくなる。

 

一方、泳動液のpHが低いほど、
分子形のシラノール基(Si−OH)が増え、
陰イオン形のシラノール基(Si−O-)は減るので、
陽イオンが集まりにくくなり、
結果、電気浸透流は小さくなる。

 

 

◆ 5について
5 × 電気浸透流はキャピラリー電気泳動に特有のものであり、ろ紙電気泳動では発生しない。

 

電気浸透流はキャピラリー電気泳動に特有のものではなく、
電気二重層を形成する他のタイプの電気泳動法でも発生しうる。

トップへ戻る