ゲルろ過クロマトグラフィーとSDS-PAGE 100回薬剤師国家試験問115

100回薬剤師国家試験 問115
マウスのある組織から目的のタンパク質を精製し、その性質を明らかにするため、以下の2つの実験を行った。実験方法と考察に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
【実験1】精製したタンパク質のジスルフィド結合を還元後、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を行った。ゲル中のタンパク質を染色すると、単一のバンドが観察された。分子量が既知の5種類の標準タンパク質についても同様の操作を行い、図1の結果を得た。

 

ゲルろ過クロマトグラフィーとSDS-PAGE 100回薬剤師国家試験問115

 

【実験2】精製したタンパク質を用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行った。分子量が既知の6種類の標準タンパク質についても同様の操作を行い、図2の結果を得た。

 

ゲルろ過クロマトグラフィーとSDS-PAGE 100回薬剤師国家試験問115

 

1 【実験1】では、電気泳動の前に、試料にSDSと2-メルカプトエタノール(2-ME)を含む緩衝液を加えて加熱した。
2 【実験1】のタンパク質の染色には、臭化エチジウム(ethidium bromide)を用いた。
3 【実験2】では、カラムから溶出したタンパク質を検出するため、溶出液の260nm における吸光度を連続的に測定した。
4 【実験1】の結果より、精製したタンパク質の単量体(モノマー)の分子量は、およそ25,000Daと考えられる。
5 【実験1】及び【実験2】の結果より、精製したタンパク質は4量体(テトラマー)として存在すると考えられる。

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100回薬剤師国家試験 問115 解答解説

 

◆ 1について
1 〇 【実験1】では、電気泳動の前に、試料にSDSと2-メルカプトエタノール(2-ME)を含む緩衝液を加えて加熱した。

 

詳細は下記のリンク先を参照
SDS-PAGEの原理 99回問98の2

 

 

◆ 2について
2 ×【実験1】のタンパク質の染色には、臭化エチジウム(ethidium bromide)を用いた。

 

SDS-PAGEで分離されたタンパク質は、
クーマシーブリリアントブルー染色や銀染色で検出する。

 

臭化エチジウム(ethidium bromide)は核酸の塩基対間に挿入されるインターカレーターであり、
DNAやRNAの検出に用いられる。

 

関連問題
SDS-PAGEで分離されたタンパク質の染色に用いる物質 109回問2

 

 

◆ 3について
3 × 【実験2】では、カラムから溶出したタンパク質を検出するため、溶出液の260nm における吸光度を連続的に測定した。

 

タンパク質を紫外可視分光光度計で検出する場合は280nmの吸光度を測定する。
280nmである理由は、タンパク質は芳香族アミノ酸残基の芳香環に由来する280nmの吸収極大を持つためである。

 

なお、核酸(DNA,RNA)を紫外可視分光光度計で検出する場合は260nmの吸光度を測定する(DNA,RNAの吸収極大波長が260nmであるため)。

 

 

◆ 4について
4 〇 【実験1】の結果より、精製したタンパク質の単量体(モノマー)の分子量は、およそ25,000Daと考えられる。

 

SDS-PAGEでは、分子量の常用対数(log10(分子量))と電気泳動の移動度・移動距離の間には直線性がある。
図1の横軸は分子量の常用対数であり、横軸の値より精製タンパク質の分子量は約25000と読める。
SDS-PAGEでは、前処理によりタンパク質の高次構造は壊れ、変性してサブユニット単位(単量体:モノマー)の直鎖状のペプチドとなる。
よって、設問のSDS-PAGEの結果より、
精製したタンパク質の単量体(モノマー)の分子量は、およそ25,000と考えられる。

 

ゲルろ過クロマトグラフィーとSDS-PAGE 100回薬剤師国家試験問115

 

SDS-PAGEでは、分子量の常用対数(log10(分子量))と電気泳動の移動度・移動距離の間には直線性がある。
図1の横軸は分子量の常用対数であり、横軸の値より精製タンパク質の分子量は約25000と読める。
SDS-PAGEでは、前処理によりタンパク質の高次構造は壊れ、変性してサブユニット単位(単量体:モノマー)の直鎖状のペプチドとなる。
よって、設問のSDS-PAGEの結果より、
精製したタンパク質の単量体(モノマー)の分子量は、およそ25,000と考えられる。

 

 

◆ 5について
5 × 【実験1】及び【実験2】の結果より、精製したタンパク質は4量体(テトラマー)として存在すると考えられる。
→ 〇 【実験1】及び【実験2】の結果より、精製したタンパク質は2量体(ダイマー)として存在すると考えられる。

 

 

【実験2】の結果より、ゲルろ過(サイズ排除)クロマトグラフィーで分離した目的タンパクの分子量は50,000である。

 

SDS-PAGEでは、タンパク質の高次構造は壊れ、単量体(モノマー)の分子量が得られるが、実験1より約25,000であった。

 

一方、ゲルろ過(サイズ排除)クロマトグラフィーでは、高次構造を保ったタンパク質の分子量が得られるが、実験2より約50,000だった。

 

以上より、目的タンパクは2量体(ダイマー)として存在すると考えられる。

 

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★ 他サイトさんの解説リンク
100回問115(e-RECさん)

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