ドキシフルリジンとカペシタビンのプロドラッグ化の目的 87回薬剤師国家試験問172a
87回薬剤師国家試験 問172a
次のプロドラッグに関する記述の正誤を判定してみよう。
a ドキシフルリジンは、フルオロウラシルのプロドラッグであり、水溶性を低下させることにより、苦味を軽減することを目的としている。
87回薬剤師国家試験 問172a
a × ドキシフルリジンは、フルオロウラシルのプロドラッグであり、水溶性を低下させることにより、苦味を軽減することを目的としている。
ドキシフルリジン(フルツロン)は、腫瘍細胞での選択的活性化を目的とした5-フルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグである。
なお、水溶性を低下させることにより苦味を軽減したプロドラッグとして、クロラムフェニコールパルミチン酸エステルやキニーネエチル炭酸エステルがある。
以下、詳細説明
ドキシフルリジンは、腫瘍細胞で高い活性を有する酵素であるピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ(ヒトではチミジンホスホリラーゼ)により加リン酸分解され、5-FUに変換される。よって、ドキシフルリジンは、腫瘍細胞での選択的活性化を目的とした5-FUのプロドラッグである。5-FUはFdUMPに代謝され、ウラシル由来のdUMPと拮抗し、チミジル酸合成酵素によるDNA合成経路を阻害する。また、5-FUはFUTPに変換され、ウラシルと同じくRNAにも取り込まれてF-RNAを生成し、RNAの機能を障害すると考えられている。
★ カペシタビンはドキシフルリジンより腫瘍組織選択性が高い5-FUのプロドラッグ
カペシタビン(ゼローダ)は、ドキシフルリジンを経て最終的に5-FUになるよう設計されたプロドラッグである。
服薬後、未変化体として消化管から吸収され、大部分が肝臓に局在する酵素カルボキシルエステラーゼによって5’-デオキシ-5-フルオロシチジンに加水分解された後、肝臓及び腫瘍組織で活性の高いシチジンデアミナーゼにより加水分解的脱アミノ化され、
5’-デオキシ-5-フルオロウリジン(ドキシフルリジン)に変換される。
さらに、腫瘍組織で活性の高いピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ(ヒトではチミジンホスホリラーゼ)により加リン酸分解され、活性体である 5-FU へと変換される。
よって、カペシタビン(ゼローダ)はドキシフルリジンと比較して、腫瘍組織での活性化の選択性が高く、消化管や骨髄への副作用は軽減されていると考えられる。
他の5−FUのプロドラッグでとしてはテガフールが有名であり、
そのプロドラッグ化の目的は作用の持続化である。
詳細は下記のリンク先を参照
テガフール プロドラッグの目的 108回問171の3