プロドラッグとプロドラッグ化の目的 96回薬剤師国家試験問178
96回薬剤師国家試験 問178
プロドラッグとプロドラッグ化の目的の対応のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
96回薬剤師国家試験 問178 解答解説
正解は1と5である。
◆ 1:バカンピシリン塩酸塩について
バカンピシリン(ペングッド)は、アンピシリンを親化合物としてエステル化したプロドラッグであり、その目的は消化管内での安定性向上および受動拡散の促進による消化管吸収の増大である。
アンピシリンは酸に不安定であり、かつ、アミノ基とカルボキシ基がイオン化するので、消化管からの吸収が悪い。
バカンピシリンは、アンピシリンのエステル化合物とすることで、消化管内のpHでの安定性向上、かつ、脂溶性を高め、生体膜透過性を高めることで、受動拡散による消化管吸収の増大が図られている。
バカンピシリンは、消化管から吸収された後、エステル結合が加水分解され、アンピシリンとなる。
◆ 2:バラシクロビル塩酸塩について
バラシクロビル(バルトレックス)は、アシクロビルを親化合物とするプロドラッグであり、その目的はトランスポーターを利用した消化管吸収の増大である。
バラシクロビルは、アシクロビルのバリンエステルとすることで、小腸のペプチドトランスポーター((PEPT1)を介して吸収されるようになり、経口吸収性が高まることを意図している。
バラシクロビルは、消化管から吸収された後、肝臓などでエステル結合が加水分解され、アシクロビルとなる。
なお、アシクロビルは、選択的にウイルス感染細胞でリン酸化されて活性体となるプロドラッグである。
◆ 3:テモカプリル塩酸塩について
テモカプリル塩酸塩(エースコール)は、テモカプリルラートのエチルエステルであり、
経口投与後、生体内でカルボキシエステラーゼによりエステル結合が加水分解され、活性代謝物のテモカプリラートを生成するプロドラッグのACE阻害薬である。
テモカプリルは、テモカプリラートのエチルエステルとすることで、脂溶性を高め、生体膜透過性を高めることで、受動拡散による消化管からの吸収を改善している。
◆ 4:インドメタシンファルネシル
インドメタシンファルネシル(インフリー)は、インドメタシンのファルネシルエステルであり、
経口投与後、生体内でエステル結合が加水分解され、活性代謝物のインドメタシンを生成する。
インドメタシンファルネシルは、NSAIDsの主な副作用である消化管障害の軽減を目的としたプロドラッグである。
◆ 5:ドキシフルリジンについて
ドキシフルリジン(フルツロン)は、腫瘍細胞内で選択的に5-FUに変換されて活性化するプロドラッグである。
詳細は下記のリンク先を参照
ドキシフルリジンのプロドラッグ化の目的 87回問172a