107回薬剤師国家試験問284,285 ガバペンチン エナカルビル及びその製剤
107回薬剤師国家試験 問284?285
近隣で喫茶店を営む高齢男性から、体調変化に関してかかりつけ薬剤師に相談があった。以前から神経因性疼痛があり、一般用医薬品の芍薬甘草湯を服用しているが、「最近、足がむずむずして気持ち悪いことが多く、夜も寝られないことがある。」とのことだった。近医を紹介し、お薬手帳を持参の上で受診するように提案した。その後、紹介した医師より、ドパミンアゴニスト使用不可のレストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群)と診断され、以下の処方を考えている旨の連絡がこのかかりつけ薬剤師にあった。
107回薬剤師国家試験 問284(実務)
かかりつけ薬剤師が、患者や医師に対して行う処方薬に関する説明として適切なのはどれか。2つ選びなさい。
1 飲みにくい場合は、自身で飲みやすいサイズに分割するように患者に説明する。
2 用量調整が必要になるので、肝機能検査値を医師に確認する。
3 芍薬甘草湯は併用できないので、服用中止を患者に説明する。
4 霧視等の眼障害について、診察時に医師から説明を受けたかについて患者に確認する。
5 眠気等が起こることがあるので自動車の運転は控えることを患者に説明する。
107回薬剤師国家試験 問285(薬剤)
ガバペンチン エナカルビル及びその製剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 ガバペンチン エナカルビルは、ガバペンチンの経口吸収のばらつきや飽和を改善するプロドラッグである。
2 ガバペンチン エナカルビルは、カルボキシルエステラーゼによる代謝を受けて活性代謝物ガバペンチンに変換される。
3 ガバペンチン エナカルビルは、ガバペンチンと同じCa2+ チャネルを介して消化管から吸収される。
4 本錠剤には、崩壊剤としてグリセリン脂肪酸エステルが含まれる。
5 本錠剤は、腸溶性を示す。
107回薬剤師国家試験 問284(実務) 解答解説
◆ 1について
1 × 飲みにくい場合は、自身で飲みやすいサイズに分割するように患者に説明する。
ガバペンチン エナカルビル錠(レグナイト錠)は徐放性製剤であるため、分割すると徐放性が失われる恐れがある。よって、ガバペンチン エナカルビル錠(レグナイト錠)は、割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのままかまずに服用するよう指導する。
◆ 2について
2 × 用量調整が必要になるので、肝機能検査値を医師に確認する。
→ 〇 用量調整が必要になるので、腎機能検査値を医師に確認する。
ガバペンチン エナカルビルは、消化管から吸収された後、カルボキシルエステラーゼによる代謝を受けて活性代謝物ガバペンチンに変換される。ガバペンチンは腎排泄型薬物である。
そのため、ガバペンチン エナカルビル錠(レグナイト錠)は、クレアチニンクリアランス値により用量調整が必要である。
◆ 3について
3 × 芍薬甘草湯は併用できないので、服用中止を患者に説明する。
ガバペンチン エナカルビル錠(レグナイト錠)は、芍薬甘草湯と併用可能である。
なお、ガバペンチン エナカルビル錠(レグナイト錠)はアルコールとの同時服用により、本剤の徐放性が失われ、成分が急速に溶出する恐れがあるため、本剤服用中は飲酒を避けるよう指導する。
◆ 4,5について
4 〇 霧視等の眼障害について、診察時に医師から説明を受けたかについて患者に確認する。
5 〇 眠気等が起こることがあるので自動車の運転は控えることを患者に説明する。
ガバペンチン エナカルビル錠(レグナイト錠)の添付文書の重要な基本的注意に以下の記載がある。
・眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
・本剤の投与により、霧視、調節障害等の眼障害が生じる可能性があるので、診察時に、眼障害について問診を行う等注意し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
・本剤の投与により体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。特に、投与量の増加、あるいは長期投与に伴い体重増加が認められることがあるため、定期的に体重計測を実施すること。
なお、上記の副作用は活性代謝物のガバペンチンに由来するため、ガバペンチン錠(ガバペン錠)にも同様の記載がある。
107回薬剤師国家試験 問285(薬剤)
◆ 1,2,3について
1 〇 ガバペンチン エナカルビルは、ガバペンチンの経口吸収のばらつきや飽和を改善するプロドラッグである。
2 〇 ガバペンチン エナカルビルは、カルボキシルエステラーゼによる代謝を受けて活性代謝物ガバペンチンに変換される。
3 × ガバペンチン エナカルビルは、ガバペンチンと同じCa2+ チャネルを介して消化管から吸収される。
ガバペンチン エナカルビル製剤のレグナイト錠のインタビューフォームにおいて、以下の記載がある。
「ガバペンチンには経口投与時の吸収のばらつき(個人差)があり、また薬物吸収トランスポーターの飽和による臨床用量付近での吸収の飽和が認められることから、薬物動態を改善する目的でプロドラッグ化したガバペンチン エナカルビル(レグナイト)が開発された。プロドラッグ化したガバペンチン エナカルビル(レグナイト)は、ガバペンチンとは異なるトランスポーターから吸収され、用量依存的にガバペンチン血中濃度が上昇することが確認されている」
ガバペンチン エナカルビルは、消化管から吸収された後、カルボキシルエステラーゼにより加水分解され、活性代謝物のガバペンチンに変換される。
◆ 4について
4 × 本錠剤には、崩壊剤としてグリセリン脂肪酸エステルが含まれる。
ガバペンチン エナカルビル錠(レグナイト錠)は、ワックスマトリックス型の徐放性製剤であり、
グリセリン脂肪酸エステルは徐放性基剤として用いられていると考えられる。
なお、ワックスマトリックス型徐放性製剤とは、
ワックスを基剤とし、その中に主薬が分散された徐放性製剤である。
レグナイト錠は、ワックスマトリックス型徐放錠の中でも、
消化液中でワックスが徐々に崩壊するタイプのものなので、ゴーストピルは出ない。
◆ 5について
5 × 本錠剤は、腸溶性を示す。
ガバペンチン エナカルビル錠(レグナイト錠)は、
ワックスマトリックス型徐放錠であり、腸溶錠ではない。
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