経皮吸収型製剤の累積薬物放出量と時間の関係を示したグラフ 101回薬剤師国家試験問179
101回薬剤師国家試験 問179
ある経皮吸収型製剤の断面図(模式図)を以下に示す。in vitro 放出試験における本製剤からの累積薬物放出量と時間の関係を示したグラフとして、正しいのはどれか。1つ選びなさい。ただし、放出試験中、薬物貯蔵層内、放出制御膜内及び粘着層内の薬物濃度は一定に保たれ、かつシンク条件が成立しているものとする。
101回薬剤師国家試験 問179 解答解説
図の経皮吸収製剤はリザーバー型(膜制御型)であり、
正解は3のグラフである。
図の経皮吸収型製剤は、放出制御膜を有するので、リザーバー型(膜制御型)の経皮吸収製剤である。
リザーバー型経皮吸収製剤からの薬物放出について、薬物貯蔵層内、放出制御膜内及び粘着層内の薬物濃度が一定に保たれ、かつ、皮膚・体液でシンク条件が成立している場合、薬物の放出制御膜透過速度はFickの第1法則に従い、薬物放出速度は一定に保たれる(0次放出を示す)。
よって、上記の条件下では、リザーバー型経皮吸収製剤からの累積薬物放出量は、経過時間tに比例するので、時間tに対して累積薬物放出量をプロットすると、選択肢3のような右上がりの直線が描かれる。
以上のことは、経口投与のリザーバー型製剤でも同様に当てはまると考えられる。
一方、マトリックス型経皮吸収製剤は、放出制御膜が無く、主薬を含むマトリックスが放出制御機能を果たす。
マトリックス型経皮吸収製剤では、貼付後、薬物が放出されていくのに伴い、マトリックス内の薬物が残存する層が後退していくので、経過時間が長くなるほど、薬物が放出されるまでにマトリックス内を拡散する距離が長くなる。
そのため、マトリックス型では、経過時間が長くなるほど、単位経過時間当たりの薬物放出量が低下する。
よって、マトリックス型では、時間tに対して累積薬物放出量をプロットすると、しだいに傾きが緩やかになる右上がりの曲線となる。
選択肢1のグラフはマトリックス型経皮吸収製剤からの薬物放出を示すものだと考えられる。
マトリックス型経皮吸収製剤からの薬物放出量は、
次のヒグチ(Higuchi)の式に従うとされる。
Q = [D・(2A−Cs)Cs・t]1/2
Q:単位面積当たりの累積薬物放出量 A:マトリックス中の薬物の全濃度
D:マトリックス中の薬物の拡散係数 Cs:薬物の溶解度
t:時間
上式より、マトリックス型経皮吸収製剤から放出される累積薬物放出量は時間の平方根(√t)に比例する。
以上のことは、経口投与のマトリックス型製剤でも、マトリックス構造が維持されたまま、マトリックス内を薬物が拡散することにより放出される製剤ならば同様に当てはまると考えられる。
関連問題
・マトリックス型製剤と膜制御型製剤の薬物放出速度 91回問178
・リザーバー型経皮吸収製剤における薬物の放出制御膜透過速度 95回問165
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