放出制御製剤に用いられる添加剤 102回薬剤師国家試験問175
102回薬剤師国家試験 問175
放出制御製剤に用いられる添加剤に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選びなさい。
1 エチルセルロースは、水に不溶であり、徐放性のコーティング剤として用いられる。
2 乳酸・グリコール酸共重合体は、生体内分解性であり、持続性注射剤用マイクロスフェアの基剤として用いられる。
3 ヒドロキシプロピルセルロースは、水和によりゲル化するため、徐放性のマトリックス基剤として用いられる。
4 ヒプロメロースは、pH 5以下の水溶液には溶解しないため、腸溶性の被膜剤として用いられる。
5 エチレン・酢酸ビニル共重合体は、経皮治療システムの放出制御膜基剤として用いられる。
102回薬剤師国家試験 問175 解答解説
◆ 1について
1 〇 エチルセルロースは、水に不溶であり、徐放性のコーティング剤として用いられる。
エチルセルロースは、セルロースのヒドロキシ基の一部にエチル基(−CH2−CH3)が結合した半合成高分子であり、水に不溶であり、徐放性コーティング剤として用いられる。
◆ 2について
2 〇 乳酸・グリコール酸共重合体は、生体内分解性であり、持続性注射剤用マイクロスフェアの基剤として用いられる。
マイクロスフェアとは、粒子径数μm〜数十μm程度の球状の担体であり、コントロールドリリースやターゲティングに用いられる。
生体内分解性高分子のポリ乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)マイクロスフェアに主薬を封入した持続性の注射剤が実用されている。
PLGAマイクロスフェア製剤は、投与後、体内でPLGAが徐々に分解され、主薬が徐々に放出されるので、持続性の放出制御製剤となる。
PLGAマイクロスフェア持続性注射として、リュープリン(リュープロレリン主薬の皮下注)、リスパダールコンスタ(リスペリドン主薬の臀筋注)、サンドスタチンLAR(オクトレオチド主薬の臀筋注)などがある。
◆ 3について
3 〇 ヒドロキシプロピルセルロースは、水和によりゲル化するため、徐放性のマトリックス基剤として用いられる。
ヒドロキプロピルセルロースは、セルロースのヒドロキシ基の一部にヒドロキシプロピル基(−CH2CHOHCH3)を結合させた半合成高分子であるが、置換度により物性が異なり、医薬品添加剤としての用途も異なる。
詳細は下記のリンク先を参照
ヒドロキシプロピルセルロースの性質と用途 93回問177b
◆ 4について
4 × ヒプロメロースは、pH 5以下の水溶液には溶解しないため、腸溶性の被膜剤として用いられる。
→ 〇 ヒプロメロースは、胃溶性被膜として用いられるが、腸溶性の被膜剤としては用いられない。
普通のヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)は、セルロースのヒドロキシ基の一部にメチル基(−CH3)またはヒドロキシプロピル基(−CH2CHOHCH3)を結合させた半合成高分子であり、水を加えると膨潤し,澄明又は僅かに混濁した粘稠性のある液となる。エタノールには溶けない。
ヒプロメロースは、湿式顆粒圧縮法の結合剤,胃溶性フィルムコーティング剤,増粘剤,懸濁化剤(懸濁安定化剤),固体分散体の担体などに使用されるが、腸溶性コーティング剤としては用いられない。
腸溶性の被膜剤として用いられるのは、ヒプロメロースのフタル酸エステルであり、酸性ではほとんど溶けないため、腸溶性コーティング剤として用いられる。
◆ 5について
5 〇 エチレン・酢酸ビニル共重合体は、経皮治療システムの放出制御膜基剤として用いられる。
エチレン・酢酸ビニル共重合体は、代表的な不溶性被膜であり、皮膚に貼付したり、体内に挿入した時の生体への刺激が非常に少ないので、外用剤の放出制御膜の基剤として用いられる。
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