放出制御型製剤に関する記述 104回薬剤師国家試験問177
104回薬剤師国家試験 問177
放出制御型製剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 硫酸鉄を含むグラデュメット型製剤は、イオン交換樹脂に鉄を吸着させて、消化管内のイオンとの交換反応により徐放させる製剤である。
2 パリペリドンを含む浸透圧ポンプ型製剤は、薬物とそれを押し出す駆動力となる電解質を高分子マトリックスに分散させた徐放性製剤である。
3 チモロールマレイン酸塩と添加剤であるメチルセルロースを含む持続性点眼剤は、熱可逆的ゾル−ゲル相転移特性を利用して、結膜嚢での薬物の長時間滞留を可能にした製剤である。
4 オキシブチニン塩酸塩を含む経皮吸収型貼付剤は、マトリックス型構造を有し、貼付後、血中薬物濃度を長時間維持できる製剤である。
5 ブセレリン酢酸塩を含むエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる生分解性マイクロカプセルは、皮下投与後、長期にわたり薬効を持続できる製剤である。
104回薬剤師国家試験 問177 解答解説
◆ 1について
1 × 硫酸鉄を含むグラデュメット型製剤は、イオン交換樹脂に鉄を吸着させて、消化管内のイオンとの交換反応により徐放させる製剤である。
グラデュメットとは多孔性プラスチックのことである。
グラデュメット製剤は、水に不溶性の多孔性プラスチック格子の間隙に主薬を分散させた錠剤であり、
消化液が格子間隙に浸入すると、主薬が溶解、拡散し、徐々に放出される徐放性製剤である。
グラデュメット製剤としては、フェロ・グラデュメットがあり、
多孔性のプラスチック格子の間隙に硫酸鉄を含有し,投与後、鉄を徐々に放出する。急速に鉄を放出することがないので,胃粘膜に対する刺激が少なく,鉄吸収効率の高い空腹時にも投与することができる。
なお、1の記述中の「イオン交換樹脂に鉄を吸着させて、消化管内のイオンとの交換反応により徐放させる製剤」は、レジネート製剤である。
◆ 2について
2 × パリペリドンを含む浸透圧ポンプ型製剤は、薬物とそれを押し出す駆動力となる電解質を高分子マトリックスに分散させた徐放性製剤である。
浸透圧ポンプ型製剤は、半透膜の外皮で覆われたリザーバー型製剤であり、リザーバー内には主薬を含む薬物層と浸透圧上昇物質を含むプッシュ層がある。
投与後、半透膜から体内の水が浸入してプッシュ層の浸透圧上昇物質が溶解し、プッシュ層が膨張すると、薬物層が押され、半透膜に開けられている薬物放出口から主薬が押し出されるかたちで放出される。
浸透圧型放出制御製剤では、半透膜と浸透圧上昇物質の働きで、リザーバー内の浸透圧が外部より高い状態が続くため、長時間一定速度で主薬が放出される(長時間0次放出)。
浸透圧を利用した放出制御システムの経口製剤をOROSという。(OROSはOsmotic controlled release oral delivery systemの略)
OROSの例として、パリペリドンを主薬とするインヴェガ錠や、メチルフェニデート塩酸塩を主薬とするコンサータ錠などがある。
関連問題
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◆ 3について
3 〇 チモロールマレイン酸塩と添加剤であるメチルセルロースを含む持続性点眼剤は、熱可逆的ゾル−ゲル相転移特性を利用して、結膜嚢での薬物の長時間滞留を可能にした製剤である。
メチルセルロースの水溶液は、低温では粘性の低いゾルであるが、温度が上昇すると粘性の高いゲルとなる。この性質を熱可逆的ゾル−ゲル相転移特性と言い、メチルセルロースは可逆的な熱応答ゲル基剤として用いられる。
リズモンTG点眼液は、チモロールマレイン酸塩を主薬とし、メチルセルロースを可逆的な熱応答ゲル基剤として添加した持続性の緑内障・高眼圧症治療剤である。
リズモンTG点眼液は、点眼後、点眼液が眼表面温度付近でゲル化し、粘性が高まることで、チモロールマレイン酸塩の結膜嚢での滞留時間が延長し、眼圧下降効果が持続するよう設計されており、1日1回の点眼で24時間の眼圧下降作用が確認されている。
関連問題
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◆ 4について
4 〇 オキシブチニン塩酸塩を含む経皮吸収型貼付剤は、マトリックス型構造を有し、貼付後、血中薬物濃度を長時間維持できる製剤である。
オキシブチニン塩酸塩を含む経皮吸収型貼付剤として、ネオキシテープがある。
ネオキシテープはマトリックス型の貼付剤であり、放出制御膜はなく、マトリックスに主薬のオキシブチニン塩酸塩が含有されており、マトリックスが放出制御機能を果たすので、貼付後、オキシブチニン塩酸塩が徐々に放出され、血中薬物濃度を長時間維持できる
なお、ネオキシテープは経皮吸収型過活動膀胱治療剤であり、主薬のオキシブチニンは、抗ムスカリン作用に加え、カルシウム拮抗作用による平滑筋直接弛緩作用を有し、膀胱に協力的に作用することにより、膀胱の過緊張状態を抑制すると考えられている。
◆ 5について
5 × ブセレリン酢酸塩を含むエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる生分解性マイクロカプセルは、皮下投与後、長期にわたり薬効を持続できる製剤である。
持続性注射剤の生分解性マイクロカプセルの基剤としては、乳酸重合体や乳酸・グリコール酸共重合体が用いられる。
生体内分解性高分子の乳酸重合体や乳酸・グリコール酸共重合体を基剤としたマイクロカプセルに、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)誘導体を含有させた持続性注射剤が実用化されている。
皮下や筋肉に投与後、マイクロカプセルの基剤がゆっくりと分解することで、徐々にLH-RH誘導体を放出するよう設計されている。
ただし、ブセレリン酢酸塩を含む持続性注射剤(スプレキュアMP皮下注)は、販売を終了している。
5の記述中のエチレン・酢酸ビニル共重合体は、代表的な不溶性被膜であり、貼付剤や体内に挿入する製剤の放出制御膜の基剤として用いられるが、生分解性マイクロカプセルの基剤としては用いられない。
エチレン・酢酸ビニル共重合体は放出制御膜基剤? 102回問175の5
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