ある経皮吸収型製剤の模式図に関する記述 95回薬剤師国家試験問165
95回薬剤師国家試験 問165
図はある経皮吸収型製剤の模式図(断面図)である。本剤に関する以下の記述の正誤を判定してみよう。
1 薬物貯蔵層内の薬物が飽和濃度に保たれているとき、定常状態での薬物の放出制御膜透過速度はFickの第1法則に従う。
2 水溶性薬物の皮膚透過性改善が期待できる。
3 放出制御膜には乳酸・グリコール酸共重合体が用いられる。
4 ニトログリセリンを主薬とした本剤を狭心症発作時に貼付することで、速やかな症状寛解が期待できる。
95回薬剤師国家試験 問165 解答解説
◆ 1について
1 〇 薬物貯蔵層内の薬物が飽和濃度に保たれているとき、定常状態での薬物の放出制御膜透過速度はFickの第1法則に従う。
図の経皮吸収型製剤は、放出制御膜を有するので、リザーバー型(膜制御型)の経皮吸収製剤である。
リザーバー型経皮吸収製剤からの薬物放出について、薬物貯蔵層内、放出制御膜内及び粘着層内の薬物濃度が一定に保たれ、かつ、皮膚・体液でシンク条件が成立している場合、薬物の放出制御膜透過速度はFickの第1法則に従い、薬物放出速度は一定に保たれる(0次放出を示す)。
関連問題
・リザーバー型経皮吸収製剤の累積薬物放出量と時間の関係 101回問179
・膜制御型製剤とマトリックス型製剤の薬物放出パターンの比較 91回問178
◆ 2について
2 × 水溶性薬物の皮膚透過性改善が期待できる。
一般に、水溶性薬物の皮膚透過性は低いが、リザーバー型経皮吸収製剤にするだけでは水溶性薬物の皮膚透過性は改善されない。
リザーバー型経皮吸収製剤では、薬物放出速度が一定に保たれる(長時間0次放出が維持される)ので、血中濃度を長時間安定させることができ、作用の持続化が図れる。
また、経皮吸収製剤では、薬物の初回通過効果を回避できることも利点である。
◆ 3について
3 × 放出制御膜には乳酸・グリコール酸共重合体が用いられる。
リザーバー型経皮吸収製剤の放出制御膜の基剤としては、不溶性で、生体内への刺激が少ないエチレン・酢酸ビニル共重合体などが用いられる。
乳酸・グリコール酸共重合体は生分解性高分子であり、持続性注射剤のマイクロカプセルの基剤としては用いられるが、リザーバー型経皮吸収製剤の放出制御膜としては用いられない。
関連問題
・乳酸・グリコール酸共重合体の性質と用途 102回問175の2
・エチレン・酢酸ビニル共重合体は放出制御膜基剤? 102回問175の5
◆ 4について
4 × ニトログリセリンを主薬とした本剤を狭心症発作時に貼付することで、速やかな症状寛解が期待できる。
経皮吸収製剤は、投与後の血中濃度の立ち上がりが緩やかであるので、発作の寛解を目的とした治療には不適である。
よって、ニトログリセリンを主薬とした経皮吸収製剤は、狭心症発作の予防には用いられるが、狭心症発作の寛解には用いられない。
ニトログリセリンを主薬としたリザーバー型経皮吸収製剤として、ニトロダームTTSがある(TTSとはtransdermal therapeutic system 経皮治療システムの略)。
なお、ニトログリセリンを主薬とした経皮吸収製剤は、マトリックス型放出制御製剤のものが多く、
バソレーターテープ,ミニトロテープはマトリックス型である。