経口徐放性製剤及びその対象薬物に関する記述 85回薬剤師国家試験問178
85回薬剤師国家試験 問178
経口徐放性製剤及びその対象薬物に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
a 徐放性製剤は、通常の製剤に比べ、薬効をより長時間持続させたり副作用の発現を低減させることが期待できる。
b 一日の投与回数が多い薬剤は、徐放性製剤とすることによって服薬コンプライアンスの向上が期待できる。
c 初回通過効果の大きい薬物は、徐放性製剤とすることによってバイオアベイラビリティが増大するという有利な点がある。
d 錠剤に徐放性コーティング皮膜を施して薬物放出速度を一定にすれば、小腸上部でのみ吸収される薬物の場合でも吸収率の低下や変動を防ぐことができる。
85回薬剤師国家試験 問178 解答解説
◆ aについて
a 〇 徐放性製剤は、通常の製剤に比べ、薬効をより長時間持続させたり副作用の発現を低減させることが期待できる。
経口徐放性製剤は、消化管内で薬物を徐々に放出するので、少ない投与回数で長時間血中濃度を安定化することができ、薬効を持続させることができる。
さらに、徐放性製剤は投与回数を減らすことで、投与後の血中濃度の急な立ち上がりによる副作用発現を低減させることができる。
◆ bについて
b 〇 一日の投与回数が多い薬剤は、徐放性製剤とすることによって服薬コンプライアンスの向上が期待できる。
徐放性製剤で投与することにより、投与回数を減らすことができ、服薬コンプライアンスを向上することができる。
◆ cについて
c × 初回通過効果の大きい薬物は、徐放性製剤とすることによってバイオアベイラビリティが増大するという有利な点がある。
→ 〇 初回通過効果の大きい薬物は、徐放性製剤とすることによってバイオアベイラビリティが低下するという不利な点がある。
経口徐放性製剤は通常の経口製剤に比べて、薬物が初回通過効果を受ける可能性は高くなる。
よって、初回通過効果の大きい薬物を経口徐放製剤として投与すると、バイオアベイラビリティが低下し、
有効な血中濃度が得られないことになりかねない。
この点から、初回通過効果の大きい薬物は、経口徐放性製剤とすることに難がある。
◆ dについて
d × 錠剤に徐放性コーティング皮膜を施して薬物放出速度を一定にすれば、小腸上部でのみ吸収される薬物の場合でも吸収率の低下や変動を防ぐことができる。
小腸上部でのみ吸収される薬物の場合、小腸上部を通過した後に放出された薬物は吸収されずに糞便中に排泄される。よって、小腸上部でのみ吸収される薬物について、錠剤に徐放性コーティング膜を施して薬物放出速度を一定にし、消化管全域で均一に放出されるようにすると、かえって吸収率が低下する可能性がある。
このように、吸収部位が狭い薬物の場合、徐放性製剤とすることで、吸収率が低下する可能性がある。