点眼液のゲル化に関わる物質 109回薬剤師国家試験問200−201
109回薬剤師国家試験 問200−201
52歳男性。会社員。2年前にソフトコンタクトレンズの定期検診で眼圧を測定したところ、平均ベースライン眼圧は右眼16 mmHg、左眼18 mmHg であったが、両眼で視野狭窄及び欠損があったため、正常眼圧緑内障と診断された。処方1による治療が開始されたが、その後、進行したため3ケ月前から処方2が追加された。
男性が来局した際、薬剤師が点眼液の使用状況を確認したところ、数週間前から処方2の使用が2〜3日おきであることがわかった。男性は、処方2の使用直後に不快なべたつきを感じることと、処方1と2の使用の間に待つ時間が長すぎるので処方2の使用を忘れてしまうことを理由として挙げた。
問200(物理・化学・生物)
男性が感じた不快なべたつきの原因の1つに点眼液のゲル化が考えられる。処方2の点眼液が点眼前はゾル状態、点眼後はゲル状態になるのに主に関わる物質はどれか。1つ選びなさい。
1 メチルセルロース
2 マクロゴール4000
3 クエン酸ナトリウム水和物
4 ベンザルコニウム塩化物
5 チモロール
問201(実務)
薬剤師が患者の訴えについて処方医に相談すると、再度診察を実施することになった。その後、処方1及び2が中止となり処方3へ変更となった。
薬剤師が患者に再度説明する使用上の注意として、適切なのはどれか。2つ選びなさい。
1 ソフトコンタクトレンズを装着したまま点眼できる。
2 点眼し忘れた場合は、翌日、朝と夕に点眼する。
3 点眼後に一時的に視界がかすんで見えることがある。
4 点眼後、目のまわりについた薬液は、すぐに拭き取るか目を閉じて洗顔する。
5 点眼後にまだべたつきを感じるときは、点眼容器を下に向けキャップをしたまま2〜3回振ってから使用すると回避できる。
109回薬剤師国家試験 問200(物理・化学・生物) 解答解説
男性が感じた不快なべたつきの原因の1つに点眼液のゲル化が考えられる。
処方2のチモロール点眼液0.5% 持続性(リズモンTG点眼)が、
点眼前はゾル状態、点眼後はゲル状態になるのに関わる物質は、
選択肢1のメチルセルロースである。
詳細は下記のリンク先を参照
点眼液中のメチルセルロースのゾル−ゲル転移 104回問177の3
109回薬剤師国家試験 問201(実務) 解答解説
処方3のラタノプロスト・チモロール配合点眼液(ザラカム配合点眼液)の使用上の注意に関する問題である。
◆ 1について
1 × ソフトコンタクトレンズを装着したまま点眼できる。
ラタノプロスト・チモロール配合点眼液(ザラカム配合点眼液)には、
保存剤(防腐剤)としてベンザルコニウム塩化物が添加されている。
ベンザルコニウム塩化物はソフトコンタクトレンズに吸着し、
ソフトコンタクトレンズが変形または変色したり、角膜上皮障害を引き起こす恐れがある。
そのため、ラタノプロスト・チモロール配合点眼液(ザラカム配合点眼液)の添付文書において、
ソフトコンタクトレンズを装着している場合は、
レンズを外してから点眼し、
点眼後15分以上経過後にレンズを再装着するよう記載されている。
◆ 2について
2 × 点眼し忘れた場合は、翌日、朝と夕に点眼する。
有効成分としてラタノプロスト等のプロスタグランジンF2α誘導体を含む点眼液は、
頻回投与により眼圧下降作用が減弱する可能性があるので、
1日1回を超えて投与してはならない。
よって、翌日に前日の点眼のし忘れに気づいた場合、
前日の分は点眼しない。
◆ 3について
3 〇 点眼後に一時的に視界がかすんで見えることがある。
有効成分としてラタノプロスト等のプロスタグランジンF2α誘導体を含む点眼液は、
点眼後、一時的に霧視(むし:かすみ目)があらわれることがあるため、
症状が回復するまで機械類の操作や自動車等の運転には従事させないよう指導する。
◆ 4について
4 〇 点眼後、目のまわりについた薬液は、すぐに拭き取るか目を閉じて洗顔する。
有効成分としてラタノプロスト等のプロスタグランジンF2α誘導体を含む点眼液は、
目のまわりについた薬液を放置すると、虹彩や瞼の色素沈着や、まつ毛が異常に太くなったり長くなったりする副作用があらわれることがある。
よって、点眼後、目のまわりについた薬液は、すぐに拭き取るか目を閉じて洗顔するよう指導する。
◆ 5について
5 × 点眼後にまだべたつきを感じるときは、点眼容器を下に向けキャップをしたまま2〜3回振ってから使用すると回避できる。
ラタノプロスト・チモロール配合点眼液(ザラカム配合点眼液)は粘性のない点眼液なので、点眼後のべたつきを回避するのに振ってから使用するよう指導する必要はない。
なお、チモロールXE点眼液やアジマイシン点眼液など、点眼液の粘度を低下させるために、点眼容器を下に向け、キャップをしたまま振ってから使用する点眼剤もある。