薬剤師国家試験過去問題集 コントロールドリリース

ツロブテロールテープ剤の薬物濃度の時間推移 109回薬剤師国家試験問283

109回薬剤師国家試験 問283
ツロブテロールテープ剤の服薬指導にあたって、事前に医薬品情報を調べたところ、有効成分及び製剤に関して、以下の情報が得られた。

 

109回薬剤師国家試験問283 ツロブテロールテープ剤の薬物濃度の時間推移

 

上記の情報に基づいて、本製剤を患児に単回貼付して24時間後に剥離した場合の血清中薬物濃度の時間推移のパターンを予測したグラフとして、最も適切なのはどれか。1つ選びなさい。なお、小児(喘息児5名)にツロブテロールドライシロップ剤20 mg/kg(ツロブテロール塩酸塩として0.02 mg/kg)を経口投与した場合の体内半減期は、インタビューフォームから3.56 時間であった。

 

109回薬剤師国家試験問283 ツロブテロールテープ剤の薬物濃度の時間推移

 

109回薬剤師国家試験問283 ツロブテロールテープ剤の薬物濃度の時間推移

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109回薬剤師国家試験 問283(薬剤)  解答解説

 

本製剤を患児に単回貼付して24時間後に剥離した場合の血清中ツロブテロール濃度の時間推移のパターンを予測したグラフとして、最も適切なのは、選択肢2のグラフである。

 

109回薬剤師国家試験問283 ツロブテロールテープ剤の薬物濃度の時間推移

 

109回薬剤師国家試験問283 ツロブテロールテープ剤の薬物濃度の時間推移

 

まず、貼付後の血中濃度の上り方から各選択肢の正誤を判定する。

 

選択肢1と4のグラフは、投与開始から24時間後に血中濃度がピークになっている。
ツロブテロールテープは24時間ごとに貼り替えるが、投与から24時間後に効果が最も高くなるよう設計されているとは考えられないので、1と4は誤りと推測できる。
また、選択肢4のグラフは、2段階で血中濃度が上昇しているが、この点からも誤りと推測できる。その理由について述べる。
製剤断面図では、マトリックス中にツロブテロールの分子と結晶が存在している。

 

109回薬剤師国家試験問283 ツロブテロールテープ剤の薬物濃度の時間推移

 

これは結晶レジボアシステムと呼ばれ、マトリックス中のツロブテロール分子の濃度を一定に保ち、製剤からのツロブテロール分子の放出速度を一定に保つための放出制御機構である。本テープ剤は2つの放出制御機構を備えているのではないため、2段階で血中濃度が上昇するとは考えられない。

 

選択肢5のグラフは、投与開始直後から血中濃度が急激に上昇し、短時間でピークに到達し、その後、急激に低下している。
経皮吸収製剤は、製剤から徐々に薬物が放出されるため、血中濃度の立ち上がりが緩やかであり、ピークに到達した後、長時間、血中濃度が一定に維持され、薬効が持続する。
よって、選択肢5のグラフのように、血中濃度は急激に変化しないと考えられる。

 

次に、テープ剤を剥離後の血中濃度の下がり方から各選択肢の正誤を判定する。
問題文中に、「小児(喘息児5名)にツロブテロールドライシロップ剤20 mg/kg(ツロブテロール塩酸塩として0.02 mg/kg)を経口投与した場合の体内半減期は、インタビューフォームから3.56 時間であった」とある。

 

テープ剤を剥離後、しばらくは皮膚内に残存するツロブテロールの血中への吸収は続く。よって、剥離後、血清ツロブテロール濃度が1/2になるには、3.56 時間よりも長い時間がかかると考えられる。

 

選択肢1,3,5のグラフは、剥離後、4時間で血中濃度が1/3以下に低下し、8時間後までに0になっているが、このように急速に血清ツロブテロール濃度が低下するとは考えられない。

 

以上のことから、最も適切なのは、選択肢2のグラフだと考えられる。

 

本問のテープ剤は、製剤断面図より、結晶レジボアシステムを採用したツロブテロールの経皮吸収製剤であるホクナリンテープだと考えられる。

 

ホクナリンテープは、貼付から8〜12時間後に血中ツロブテロール濃度が最も高くなり、貼付後24時間まで一定の血中濃度が維持される。夜寝る前に貼付すれば、呼吸機能が低くなりやすい明け方の時間帯に薬効が最も高くなると考えられる。

 

結晶レジボアシステムとは、マトリックス中にツロブテロールの分子と結晶を共存させ、結晶に薬物貯蔵槽としての機能を持たせた放出制御機構である。
結晶レジボアシステムを採用するマトリックス型経皮吸収製剤では、マトリックス中のツロブテロール分子が皮膚に移行して減少すると、その分、ツロブテロールの結晶が溶解してツロブテロール分子が補充され、マトリックス中のツロブテロール分子の濃度が一定に保たれる。
マトリックス内の薬物分子濃度が維持されている間は、薬物放出速度が一定に保たれるので、長時間一定の薬効が維持される。
さらに、結晶レジボアシステムでは、マトリックス内の薬物分子濃度が高くなりすぎないよう抑えられ、かつ、結晶が溶解して分子になるという段階を経ることから、薬物放出速度が速くなりすぎることを防止し、副作用の発現が抑えられる。

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