メトトレキサートと一般用医薬品の相互作用 107回薬剤師国家試験問266−267

107回薬剤師国家試験 問266−267
17歳男性。病的骨折を起こして精査の中で左脛骨骨肉腫と診断された。左膝関節離断術の後、翌月からメトトレキサート12 g/m2/日、ドキソルビシン30 mg/m2/日、シスプラチン120 mg/m2/日による術後化学療法が開始された(全投与期間16週間、9コースから成るMAP法)。入院時の検査値、持参した一般用医薬品は以下のとおりであった。

 

107回薬剤師国家試験問266−267 メトトレキサートとロキソプロフェンの相互作用

 

問266(薬剤)
この患者において、術後化学療法の施行中も、持参した一般用医薬品の服用を継続した場合、発現する可能性が最も高い薬物間相互作用はどれか。1つ選びなさい。
1 ドキソルビシンが、UGT1A1を介したメトトレキサートのポリグルタミン酸化を阻害する。
2 ファモチジンが、ジヒドロ葉酸還元酵素を介したメトトレキサートの代謝を阻害する。
3 シスプラチンが、尿細管における有機カチオントランスポーターOCT2を介したメトトレキサートの再吸収を阻害する。
4 酸化マグネシウムが、P-糖タンパク質を介したメトトレキサートの腸肝循環を阻害する。
5 ロキソプロフェンが、尿細管における有機アニオントランスポーターOAT3を介したメトトレキサートの分泌を阻害する。

 

問267(実務)
この患者に対して、第1週目(1コース目)のメトトレキサートを6時間単独静脈内投与することになった。医療チーム内で薬剤師が確認する事項として、適切でないのはどれか。1つ選びなさい。
1 メトトレキサート初回投与翌日より葉酸錠の内服を開始すること
2 メトトレキサート初回投与終了後よりホリナートカルシウム注を静注すること
3 メトトレキサート投与前日よりアセタゾラミド錠を内服していること
4 メトトレキサート投与翌日より24時間おきに3日間治療薬物モニタリング(TDM)を実施すること
5 メトトレキサート投与前日より持参したロキソプロフェン錠を使用中止すること

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107回薬剤師国家試験 問266(薬剤) 解答解説

 

107回薬剤師国家試験問266−267 メトトレキサートとロキソプロフェンの相互作用

 

発現する可能性が最も高い薬物間相互作用は、
選択肢5の「ロキソプロフェンが、尿細管における有機アニオントランスポーターOAT3を介したメトトレキサートの分泌を阻害する」である。
メトトレキサートは、腎臓の近位尿細管において尿中に分泌されるが、
尿細管上皮細胞の側底膜(血液側)に存在する有機アニオントランスポーターのOAT1やOAT3により、血液中から細胞内に取り込まれると考えられている。
ロキソプロフェンなどの酸性NSAIDsも尿細管分泌され、
これにOAT1やOAT3が関与すると考えられている。
よって、メトトレキサートとロキソプロフェンを併用すると、
OAT1やOAT3を介したメトトレキサートの尿細管分泌が阻害されると考えられる。
また、NSAIDsのプロスタグランジン合成阻害作用により、腎血流量が低下し、
メトトレキサートの腎排泄が低下することも考えられる。

 

 

107回薬剤師国家試験 問267(実務) 解答解説

 

◆ 1,2について
1 × メトトレキサート初回投与翌日より葉酸錠の内服を開始すること
2 ○ メトトレキサート初回投与終了後よりホリナートカルシウム注を静注すること

 

メトトレキサートの毒性を軽減する目的で、
メトトレキサート初回投与終了後よりホリナートカルシウム注(ロイコボリン注)を静注する。
ホリナートカルシウムは、メトトレキサートが作用する酵素に関与せず、
細胞の葉酸プールに取り込まれ、
活性型葉酸となり、細胞の核酸合成を再開させる作用がある。
このように、メトトレキサートとロイコボリンを併用する療法を、
メトトレキサート・ロイコボリン救援療法と呼ぶ。

 

 

◆ 3について
3 ○ メトトレキサート投与前日よりアセタゾラミド錠を内服していること

 

メトトレキサートは、腎臓から尿中排泄されることにより消失するので、
腎臓の保護のために、
水分補給・輸液・利尿剤の投与により、尿中排泄を促進させる。
また、メトトレキサートは酸性薬物のため、尿が酸性側に傾くと、
メトトレキサートの溶解度が低下し、析出した結晶が尿細管に沈着するおそれがあるので、
尿のアルカリ化のため、炭酸水素ナトリウム(メイロン)やアセタゾラミド(ダイアモックス)が投与される。
アセタゾラミドは、利尿作用と尿のアルカリ化作用を併せ持つので、
メトトレキサートの排泄を促進する目的で、内服や静注される。
なお、メトトレキサートの排泄促進において、
利尿剤の選択にあたっては、尿を酸性化する薬剤(フロセミド、エタクリン酸、チアジド系利尿剤等)の使用を避けることとされている。

 

 

◆ 4について
4 ○ メトトレキサート投与翌日より24時間おきに3日間治療薬物モニタリング(TDM)を実施すること

 

メトトレキサートは、
骨髄抑制,肝・腎機能障害等の重篤な副作用を起こすことがある。
メトトレキサート・ロイコボリン救援療法においては、
投与後一定期間は頻回にメトトレキサートの血中濃度を測定し、
メトトレキサート投与開始後24時間のメトトレキサートの濃度が1×10−5モル濃度、
48時間の濃度が1×10−6モル濃度、
72時間の濃度が1×10−7モル濃度以上の時、
重篤な副作用が発現する危険性が高いので、
ロイコボリンの増量投与・ロイコボリン救援投与の延長等の処置を行うこととされている。
なお、メトトレキサート・ロイコボリン救援療法によるメトトレキサート排泄遅延時の解毒薬として、
メトトレキサートを分解する作用を有するグルカルピダーゼ(メグルダーゼ静注用)がある。

 

 

◆ 5について
5 ○ メトトレキサート投与前日より持参したロキソプロフェン錠を使用中止すること

 

ロキソプロフェンは、尿細管分泌の抑制や、
プロスタグランジン合成阻害による腎血流量の低下により、
メトトレキサートの腎排泄を低下させるため、
メトトレキサート・ロイコボリン救援療法の前日には、
ロキソプロフェンの使用を中止する。

 

 

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