腎排泄に関する記述 103回薬剤師国家試験問170

103回薬剤師国家試験 問170
腎排泄に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 一般に、通常成人の腎血流量は100〜130 mL/min である。
2 糸球体ろ過は、加圧ろ過であり、毛細血管内圧がボーマン嚢内圧よりも高いために起こる。
3 サリチル酸は、尿がアルカリ性になると尿細管での再吸収が増加し、その腎クリアランスは小さくなる。
4 パラアミノ馬尿酸の腎クリアランスは、血漿中濃度の増加に伴って大きくなる。
5 尿細管において再吸収を受けない薬物の血中濃度が定常状態にある時、尿中の薬物濃度は血漿中の非結合形薬物濃度に比べて高くなる。

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103回薬剤師国家試験 問170 解答解説

 

◆ 1について
1 × 一般に、通常成人の腎血流量は100〜130 mL/min である。

 

通常成人において、
腎血流量は1000〜1300mL/min である。
また、血液中の血漿の占める割合を55%とすると、
腎血漿流量は550〜700mL/min である。

 

ヒトの全血液量を5Lとすると、
すべての血液は4〜5分に1回のペースで腎臓を通ることになる。

 

 

◆ 2について
2 ○ 糸球体ろ過は、加圧ろ過であり、毛細血管内圧がボーマン嚢内圧よりも高いために起こる。

 

 

◆ 3について
3 × サリチル酸は、尿がアルカリ性になると尿細管での再吸収が増加し、その腎クリアランスは小さくなる。
→ 〇 サリチル酸は、尿がアルカリ性になると尿細管での再吸収が減少し、その腎クリアランスは大きくなる。

 

尿細管での薬物の再吸収は、
多くの場合、単純拡散により起こり、pH分配仮説に従う。
この場合の尿のpHと再吸収量の関係は以下の通り。

 

・酸性薬物の再吸収
尿のpHが低いほど、分子形分率が大きくなるので、
再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。
尿のpHが高いほど、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。

 

・塩基性薬物の再吸収
pHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。
pHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、
再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。

 

サリチル酸は酸性薬物であり、
単純拡散により尿細管再吸収されるので、
尿が酸性になると尿細管での再吸収が増大し、
尿がアルカリ性になると尿細管での再吸収が減少する。

 

関連問題
尿細管における塩基性薬物の再吸収と尿のpH 91回問151の3

 

 

◆ 4について
4 × パラアミノ馬尿酸の腎クリアランスは、血漿中濃度の増加に伴って大きくなる。
→ 〇 パラアミノ馬尿酸の腎クリアランスは、血漿中濃度の増加に伴って小さくなる。

 

パラアミノ馬尿酸は、糸球体ろ過と尿細管分泌により、
腎臓から尿中に排泄される。

 

103回薬剤師国家試験問170 腎排泄に関する記述のうち、正しいのはどれか

 

パラアミノ馬尿酸の尿細管分泌には、
有機アニオン輸送系などのトランスポーターが関与しており、
血漿中濃度の増加に伴い、トランスポーターが混み合ってくるため、
尿細管分泌クリアランスが低下し、腎クリアランスは小さくなる。
血中濃度が高くなると、最終的に、
トランスポーターが飽和することにより、尿細管分泌は飽和する。
下の図は、パラアミノ馬尿酸における、
尿中排泄速度・腎クリアランスと、血漿中濃度の関係を示す。

 

103回薬剤師国家試験問170 腎排泄に関する記述のうち、正しいのはどれか

 

このように、尿細管分泌に飽和が生じる薬物では、
腎クリアランスと血漿中濃度の関係は非線形を示し、
血漿中濃度の上昇に伴い、尿細管分泌クリアランスが低下するため、
腎クリアランスは低下する。

 

 

◆ 5について
5 ○ 尿細管において再吸収を受けない薬物の血中濃度が定常状態にある時、尿中の薬物濃度は血漿中の非結合形薬物濃度に比べて高くなる。

 

主に腎排泄で消失し、かつ、再吸収を受けない薬物の場合、
原尿中に排泄された薬物は、尿管を通る間に、
原尿の水分が再吸収されることにより濃縮されるため、
尿中の薬物濃度は血漿中の非結合形薬物濃度に比べて高くなる。

 

 

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103回問170(e-RECさん)

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