薬物の腎排泄に関する記述 95回薬剤師国家試験問157

95回薬剤師国家試験 問157
薬物の腎排泄に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
1 アミノ酸やブドウ糖などの栄養成分は、糸球体ろ過されない。
2 サリチル酸の尿細管再吸収速度は、尿のpHが高いほど速くなる。
3 ジゴキシンは、近位尿細管で P-糖タンパク質によって分泌される。
4 イヌリンの尿中排泄速度は、血中濃度によらず一定である。
5 p-アミノ馬尿酸の腎クリアランスは、血中濃度が高いほど小さくなる。

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題 排泄 一覧へ

 

 

95回薬剤師国家試験 問157 解答解説

 

薬物の腎排泄に関する記述のうち、正しいものは、
選択肢3と5である。

 

95回薬剤師国家試験問157 薬物の腎排泄に関する記述のうち、正しいものはどれか

 

◆ 1について
1 × アミノ酸やブドウ糖などの栄養成分は、糸球体ろ過されない。

 

糖,アミノ酸,ビタミンなどの栄養成分は、
糸球体ろ過されるが、尿細管で再吸収される。

 

 

◆ 2について
2 × サリチル酸の尿細管再吸収速度は、尿のpHが高いほど速くなる。
→ 〇 サリチル酸の尿細管再吸収速度は、尿のpHが高いほど遅くなる。

 

尿細管での薬物の再吸収は、
多くの場合、単純拡散により起こり、pH分配仮説に従う。
この場合の尿のpHと再吸収量の関係は以下の通り。

 

・酸性薬物
尿のpHが低いほど、分子形分率が大きくなるので、
尿細管再吸収速度は速くなり、腎排泄速度は遅くなる。
尿のpHが高いほど、分子形分率が小さくなるので、
尿細管再吸収速度は遅くなり、腎排泄速度は速くなる。

 

・塩基性薬物
尿のpHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、
尿細管再吸収速度は遅くなり、腎排泄速度は速くなる。
尿のpHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、
尿細管再吸収速度は速くなり、腎排泄速度は遅くなる。

 

サリチル酸は、酸性薬物であるので、
尿のpHが高いほど、
分子形分率が小さくなり、尿細管再吸収速度は遅くなる。

 

関連問題
塩基性薬物の再吸収と尿のpH 91回問151の3

 

 

◆ 3について
3 ○ ジゴキシンは、近位尿細管でP-糖タンパク質によって分泌される。

 

ジゴキシンは、主に未変化体として、
腎臓で糸球体ろ過と尿細管分泌により尿中排泄されて消失する。
ジゴキシンの近位尿細管からの尿中分泌には、
P-糖タンパク質が関与すると考えられている。

 

95回薬剤師国家試験問157 薬物の腎排泄に関する記述のうち、正しいものはどれか

 

 

◆ 4について
4 × イヌリンの尿中排泄速度は、血中濃度によらず一定である。
→ 〇 イヌリンの尿中排泄速度は、血中濃度に比例して変化する。

 

イヌリンは、血漿タンパク質と結合しないことから糸球体で自由にろ過され、
糸球体ろ過のみで消失し、尿細管分泌も尿細管再吸収も受けない。
よって、イヌリンの尿中排泄速度は、血漿中濃度に比例する。

 

詳細は下記のリンク先を参照
イヌリンの尿中排泄速度と血中濃度の関係 95回問157の4

 

 

なお、イヌリンの腎クリアランスは、
血漿中濃度によらず一定である。
関連問題
イヌリンの腎クリアランスと糸球体ろ過速度・血漿中濃度の関係 96回問155の1,2

 

 

◆ 5について
5 ○ p-アミノ馬尿酸の腎クリアランスは、血中濃度が高いほど小さくなる。

 

パラアミノ馬尿酸は、糸球体ろ過と尿細管分泌により、
腎臓から尿中に排泄される。

 

95回薬剤師国家試験問157 薬物の腎排泄に関する記述のうち、正しいものはどれか

 

パラアミノ馬尿酸の尿細管分泌には、
有機アニオン輸送系などのトランスポーターが関与しており、
血漿中濃度の増加に伴い、トランスポーターが混み合ってくるため、
尿細管分泌クリアランスが低下し、腎クリアランスは小さくなる。
血中濃度が高くなると、最終的に、
トランスポーターが飽和することにより、尿細管分泌は飽和する。
下の図は、パラアミノ馬尿酸における、
尿中排泄速度・腎クリアランスと、血漿中濃度の関係を示す。

 

95回薬剤師国家試験問157 薬物の腎排泄に関する記述のうち、正しいものはどれか

 

このように、尿細管分泌に飽和が生じる薬物では、
腎クリアランスと血漿中濃度の関係は非線形を示し、
血漿中濃度の上昇に伴い、尿細管分泌クリアランスが低下するため、
腎クリアランスは低下する。

トップへ戻る