尿細管における薬物の再吸収と尿のpH 91回薬剤師国家試験問151の3
91回薬剤師国家試験 問151の3
物質の生体膜透過に関する記述について正誤を判定してみよう。
3 腎尿細管での再吸収が単純拡散で起こる場合は、塩基性薬物の腎排泄速度は尿がアルカリ性になれば増加する。
91回薬剤師国家試験 問151の3 解答解説
3 × 腎尿細管での再吸収が単純拡散で起こる場合は、塩基性薬物の腎排泄速度は尿がアルカリ性になれば増加する。
→ 〇 腎尿細管での再吸収が単純拡散で起こる場合、塩基性薬物の腎排泄速度は、尿がアルカリ性になれば低下し、尿が酸性になれば増加する。
尿細管での受動的再吸収は、単純拡散により起こり、pH分配仮説に従うとすると、
pHと再吸収量の関係は以下の通り。
・酸性薬物
pHが低いほど、分子形分率が大きくなるので、再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。
pHが高いほど、分子形分率が小さくなるので、再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。
・塩基性薬物
pHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。
pHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。
以下、詳細
◆ 弱酸性薬物の場合
弱酸性薬物は、水溶液中で以下の平衡状態にある。
上式より、弱酸性薬物は、
溶液のpHが低いほど分子形分率は大きくなり、
溶液のpHが高いほど分子形分率は小さくなる。
よって、弱酸性薬物の尿細管での受動的再吸収について、
pHが低いほど、分子形分率が大きくなるので、再吸収は増大し、
pHが高いほど、分子形分率が小さくなるので、再吸収は減少する。
◆ 弱塩基性薬物の場合
弱塩基性薬物は、水溶液中で以下の平衡状態にある。
上式より、弱塩基性薬物は、
溶液のpHが低いほど分子形分率は小さくなり、
溶液のpHが高いほど分子形分率は大きくなる。
よって、弱塩基性薬物の尿細管での受動的再吸収について、
pHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、再吸収は減少し、
pHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、再吸収は増大する。