トランスポーターを介した薬物輸送に関する記述 103回薬剤師国家試験問166
103回薬剤師国家試験 問166
トランスポーターを介した薬物輸送に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 促進拡散型トランスポーターは、電気化学ポテンシャル差を駆動力とする。
2 ミカエリス定数に比べて低い基質濃度での輸送速度は、濃度によらず一定となる。
3 ペプチドトランスポーターPEPT1によるセファレキシン輸送の駆動力は、プロトン濃度勾配である。
4 有機アニオントランスポーターOAT1によるメトトレキサート輸送は、ATPの加水分解エネルギーを駆動力として直接利用する。
5 P-糖タンパク質によるシクロスポリンの輸送は、二次性能動輸送である。
103回薬剤師国家試験 問166 解答解説
◆ 1について
1 〇 促進拡散型トランスポーターは、電気化学ポテンシャル差を駆動力とする。
促進拡散は、トランスポーターを介する受動輸送である。
受動輸送は、濃度差または電位差があるときに生じる電気化学ポテンシャル差を駆動力とし、
物質を濃度の高い方から低い方へと輸送することである。
◆ 2について
2 × ミカエリス定数に比べて低い基質濃度での輸送速度は、濃度によらず一定となる。
担体介在輸送の輸送速度はミカエリス・メンテン式で表される。
基質濃度がミカエリス定数よりきわめて低い場合、輸送速度は基質濃度に比例する。
基質濃度がミカエリス定数よりきわめて高い場合、輸送が飽和することにより、基質濃度によらず輸送速度は最大値(Vmax)で一定となる。
詳細は下記のリンク先を参照
トランスポーターを介した輸送の速度と基質濃度 103回問166の2
関連問題
薬物濃度がMichaelis定数に比べて著しく大きな値のときの輸送速度 94回問151の5
◆ 3について
3 〇 ペプチドトランスポーターPEPT1によるセファレキシン輸送の駆動力は、プロトン濃度勾配である。
ペプチドトランスポーターPEPT1は、H+/ペプチド共輸送体であり、二次性能動輸送の担体である。
PEPT1は、一次性能動輸送によって生じたプロトンの濃度勾配を駆動力とし、プロトンとジ・トリペプチドを共輸送するので、二次性能動輸送担体に分類される。
PEPT1はオリゴペプチドの他、β-ラムタム系抗生物質,アンギオテンシン変換酵素阻害薬,バラシクロビルなど構造がオリゴペプチドに類似した薬物の吸収にも関与すると考えられている。
二次性能動輸送は、ATPの加水分解エネルギーを直接利用する一次性能動輸送によって生じたイオンの勾配を駆動力とする。
よって、二次性能動輸送はATPの加水分解エネルギーを間接的に利用するともいえる。
◆ 4について
4 × 有機アニオントランスポーターOAT1によるメトトレキサート輸送は、ATPの加水分解エネルギーを駆動力として直接利用する。
→ 〇 有機アニオントランスポーターOAT1によるメトトレキサート輸送は、ATPの加水分解エネルギーを駆動力として間接的に利用する。
有機アニオントランスポーターOAT1は、腎臓の近位尿細管上皮細胞の血管側に存在し、ジカルボン酸を細胞外に出し、有機アニオン物質を細胞内に取り込む交換輸送を行う。
OAT1は、一次性能動輸送によって生じたジカルボン酸の濃度勾配を駆動力とし、ジカルボン酸と有機アニオン物質を交換輸送する二次性能動輸送を行うので、駆動力としてATPの加水分解エネルギーを間接的に利用すると考えられる。
◆ 5について
5 × P-糖タンパク質によるシクロスポリンの輸送は、二次性能動輸送である。
→ 〇 P-糖タンパク質によるシクロスポリンの輸送は、一次性能動輸送である。
一次性能動輸送とは、ATPの加水分解エネルギーを直接利用し、濃度勾配または電気化学ポテンシャル勾配に逆らい、物質を濃度の低い方から高い方へと輸送する担体輸送である。
一次性能動輸送担体として、以下のものが挙げられる。
・Na+,K+ ATPase
・P-糖タンパク質(MDR1:multidrug resistance protein 1)
・MRP(multidrug resistance-associated protein)
・BCRP (breast cancer resistant protein)
・BSEP (bile salt export pump)
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