物質の生体膜透過に関する記述 91回薬剤師国家試験問151
91回薬剤師国家試験 問151
物質の生体膜透過に関する記述について、誤っているものはどれか。1つ選びなさい。
1 D-グルコースの生体膜透過は担体介在輸送によって効率良く起こり、促進拡散と能動輸送の2種類の機構が存在する。
3 腎尿細管での再吸収が単純拡散で起こる場合は、塩基性薬物の腎排泄速度は尿がアルカリ性になれば増加する。
4 膜動輸送により起こる高分子の膜透過にはエネルギーが必要である。
91回薬剤師国家試験 問151 解答解説
◆ 1について
1 〇 D-グルコースの生体膜透過は担体介在輸送によって効率良く起こり、促進拡散と能動輸送の2種類の機構が存在する。
D-グルコースを輸送する担体として、
促進拡散を行うGLUT(glucose transporter)と、
二次性能動輸送を行うSGLT(sodium glucose cotransporter)がある。
GLUT(glucose transporter)は、グルコースを濃度勾配に従い輸送する促進拡散の担体である。
SGLT(sodium glucose cotransporter)は、一次性能動輸送によって生じたNa+の濃度勾配を利用し、Na+とグルコースを共輸送する二次性能動輸送の担体である。
◆ 3について
3 × 腎尿細管での再吸収が単純拡散で起こる場合は、塩基性薬物の腎排泄速度は尿がアルカリ性になれば増加する。
→ 〇 腎尿細管での再吸収が単純拡散で起こる場合、塩基性薬物の腎排泄速度は、尿がアルカリ性になれば低下し、尿が酸性になれば増加する。
尿細管での受動的再吸収は、単純拡散により起こり、pH分配仮説に従うとすると、
pHと再吸収量の関係は以下の通り。
・酸性薬物
pHが低いほど、分子形分率が大きくなるので、再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。
pHが高いほど、分子形分率が小さくなるので、再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。
・塩基性薬物
pHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。
pHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。
詳細は下記のリンク先を参照
尿細管における薬物の再吸収と尿のpH 91回問151の3
◆ 4について
4 〇 膜動輸送により起こる高分子の膜透過にはエネルギーが必要である。
膜動輸送は、サイトーシスと呼ばれ、細胞膜が変形することにより、
物質が細胞内または細胞外へと輸送されることを指す。
細胞外から細胞内への膜動輸送がエンドサイトーシスであり、
細胞内から細胞外への膜動輸送がエキソサイトーシスである。
膜動輸送は、低分子のみならず高分子の輸送にも関与する。
膜動輸送にはエネルギーが必要と考えられている。