P-糖タンパク質(P-gp)に関する記述 93回薬剤師国家試験問151
93回薬剤師国家試験 問151
P-糖タンパク質(P-gp)に関する記述について、正しいものはどれか。3つ選びなさい。
1 P-gpを介する薬物の生体膜透過においては、ナトリウム勾配が駆動力となる。
2 基質認識性が厳密なため、シクロスポリンやビンクリスチンなど特定の脂溶性薬物のみが輸送される。
3 小腸上皮細胞では刷子縁膜側に発現し、薬物を細胞外に排出する。
4 脳では毛細血管内皮細胞の血液側細胞膜に発現し、脳への薬物の分布を制限している。
5 肝細胞では胆管側膜上に発現し、薬物を胆汁中へ排泄する。
93回薬剤師国家試験 問151 解答解説
◆ 1について
1 × P-gpを介する薬物の生体膜透過においては、ナトリウム勾配が駆動力となる。
P-糖タンパク質は一次性能動輸送担体である。
一次性能動輸送とは、ATPの加水分解エネルギーを駆動力とし、濃度勾配または電気化学ポテンシャル差に逆らい、物質を濃度の低い方から高い方へと輸送する担体輸送である。
◆ 2について
2 × P-糖タンパク質は基質認識性が厳密なため、シクロスポリンやビンクリスチンなど特定の脂溶性薬物のみが輸送される。
P-糖タンパク質の基質認識性は低い。
また、脂溶性薬物のみならず、水溶性薬物も輸送される。
◆ 3,4,5について
3 〇 P-糖タンパク質は、小腸上皮細胞では刷子縁膜側に発現し、薬物を細胞外に排出する。
4 〇 P-糖タンパク質は、脳では毛細血管内皮細胞の血液側細胞膜に発現し、脳への薬物の分布を制限している。
5 〇 P-糖タンパク質は、肝細胞では胆管側膜上に発現し、薬物を胆汁中へ排泄する。
P-糖タンパク質は、薬物を含む異物を体外に排出するために、物質を細胞内から細胞外へ排出する。
小腸上皮細胞では、P-糖タンパク質は小腸の管腔側となる刷子縁膜側に発現し、薬物を細胞内から小腸管腔に排出し、吸収を抑制している。
肝実質細胞では、P-糖タンパク質は胆管側の細胞膜上に発現し、薬物を細胞内から胆汁中へ排泄する。
脳の毛細血管内皮細胞では、P-糖タンパク質は血液側の細胞膜に発現し、薬物を細胞内から血液中へ排出し、脳への薬物の分布を制限している。