薬物の生体膜透過機構に関する記述 101回薬剤師国家試験問166
101回薬剤師国家試験 問166
薬物の生体膜透過機構に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 単純拡散では、薬物は濃度勾配に従って透過し、その透過速度はMichaelis-Menten式により表すことができる。
2 促進拡散はトランスポーターを介した輸送であるため、構造の類似した化合物の共存により透過速度が低下する場合がある。
3 一次性能動輸送は、ATPの加水分解により得られるエネルギーを直接利用する。
4 膜動輸送による高分子の細胞内取り込みでは、生体膜自体の形態的変化は起きない。
101回薬剤師国家試験 問166 解答解説
◆ 1について
1 × 単純拡散では、薬物は濃度勾配に従って透過し、その透過速度はMichaelis-Menten式により表すことができる。
単純拡散では、薬物はトランスポーターを介さず、濃度勾配または電気化学ポテンシャル差に従って透過し、
その透過速度は、Fickの拡散速度式により表すことができる。
詳細は下記のリンク先を参照
Fickの第一法則に従う膜透過速度 97回問48
なお、Michaelis-Menten式は、トランスポーターを介した輸送の輸送速度を表す式である。
詳細は下記のリンク先を参照
トランスポーターを介した輸送の速度と基質濃度 103回問166の2
◆ 2について
2 〇 促進拡散はトランスポーターを介した輸送であるため、構造の類似した化合物の共存により透過速度が低下する場合がある。
促進拡散とは、トランスポーターを介するが、濃度勾配または電気化学ポテンシャル差に従い、
物質を濃度の高い方から低い方へと輸送する受動輸送である。
トランスポーターを介する輸送では、構造類似体の共存により、競合阻害が生じ、輸送速度が低下する場合がある。
関連問題
単純拡散及び促進拡散における構造類似体の共存による影響 99回問166の5
◆ 3について
3 〇 一次性能動輸送は、ATP の加水分解により得られるエネルギーを直接利用する。
一次性能動輸送とは、ATPの加水分解エネルギーを直接利用し、濃度勾配または電気化学ポテンシャル勾配に逆らい、物質を濃度の低い方から高い方へと輸送する担体輸送である。
◆ 4について
4 × 膜動輸送による高分子の細胞内取り込みでは、生体膜自体の形態的変化は起きない。
→ 〇 膜動輸送による高分子の細胞内取り込みでは、生体膜自体の形態的変化が起きる。
膜動輸送は、サイトーシスと呼ばれ、細胞膜が変形することにより、
物質が細胞内または細胞外へと輸送されることを指す。
また、膜動輸送にはエネルギーが必要と考えられている。
★ 他サイトさんの解説リンク
101回問166(e-RECさん)