薬物の単純拡散による消化管吸収に及ぼす管腔内pHの影響 100回薬剤師国家試験問41
100回薬剤師国家試験 問41
弱酸性薬物の単純拡散による消化管吸収に及ぼす管腔内pHの影響として正しい記述はどれか。1つ選びなさい。ただし、薬物は全て溶解しているものとする。
1 pH が低下すると分子形分率が低下し、吸収が増加する。
2 pH が低下すると分子形分率が低下し、吸収が減少する。
3 pH が低下すると分子形分率が上昇し、吸収が増加する。
4 pH が低下すると分子形分率が上昇し、吸収が減少する。
5 pH の変化によって、吸収は変化しない。
100回薬剤師国家試験 問41 解答解説
弱酸性薬物の単純拡散による消化管吸収に及ぼす管腔内pHの影響として正しいのは、
選択肢3の「pH が低下すると分子形分率が上昇し、吸収が増加する」である。
物質の単純拡散における細胞膜透過について、pH分配仮説という理論がある。
この仮説は、脂溶性の高い分子形(非イオン形)は細胞膜を透過し、水溶性の高いイオン形は細胞膜を透過しないとし、物質のプロトンの解離・保持による脂溶性の変化が単純拡散による透過に大きな影響を与えるという考えである。
薬物が単純拡散により吸収され、pH分配仮説に従うとすると、
管腔内pHと吸収の関係は以下の通り。
・弱酸性薬物
pHが低いほど、分子形分率が大きくなるので、吸収は増大し、
pHが高いほど、分子形分率が小さくなるので、吸収は減少する。
・弱塩基性薬物
pHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、吸収は減少し、
pHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、吸収は増大する。
以下、詳細
◆ 弱酸性薬物の場合
弱酸性薬物は、水溶液中で以下の平衡状態にある。
上式より、弱酸性薬物は、
溶液のpHが低いほど分子形分率は大きくなり、
溶液のpHが高いほど分子形分率は小さくなる。
よって、弱酸性薬物が単純拡散により吸収され、pH分配仮説に従う場合、
管腔内のpHが低いほど、分子形分率が大きくなるので、吸収は増大し、
管腔内のpHが高いほど、分子形分率が小さくなるので、吸収は減少する。
◆ 弱塩基性薬物の場合
弱塩基性薬物は、水溶液中で以下の平衡状態にある。
上式より、弱塩基性薬物は、
溶液のpHが低いほど分子形分率は小さくなり、
溶液のpHが高いほど分子形分率は大きくなる。
よって、弱塩基性薬物が単純拡散により吸収され、pH分配仮説に従う場合、
管腔内のpHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、吸収は減少し、
管腔内のpHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、吸収は増大する。
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