物質の生体膜透過に関する記述 90回薬剤師国家試験問151
90回薬剤師国家試験 問151
物質の生体膜透過に関する記述の正誤について、正しいものはどれか。
a 小腸上皮細胞に存在するNa+,K+ ATPaseは、促進拡散の輸送体である。
b P-糖タンパク質は、一次性能動輸送体である。
c 二次性能動輸送は、ATPの加水分解エネルギーを直接の駆動力とする。
d エンドサイトーシスには、顆粒状物質を取り込む食作用と液状物質を取り込む飲作用がある。
90回薬剤師国家試験 問151 解答解説
◆ aについて
a × 小腸上皮細胞に存在するNa+,K+ ATPaseは、促進拡散の輸送体である。
Na+,K+ ATPaseは、一次性能動輸送の輸送体であり、
ATPの加水分解エネルギーを直接の駆動力とし、濃度勾配に逆らい、
Na+を細胞外に排出すると同時にK+を細胞内に取り込む輸送を行う。
◆ bについて
b 〇 P-糖タンパク質は、一次性能動輸送体である。
P-糖タンパク質は一次性能動輸送担体であり、
ATPの加水分解エネルギーを直接利用し、濃度勾配に逆らい、細胞内の薬物を細胞外に排出する。
◆ cについて
c × 二次性能動輸送は、ATPの加水分解エネルギーを直接の駆動力とする。
→ 〇 二次性能動輸送は、ATPの加水分解エネルギーを間接の駆動力とする。
二次性能動輸送とは、一次性能動輸送によって生じたイオンの勾配に由来する電気化学ポテンシャル勾配や電位差を駆動力とし、物質を濃度の低い方から高い方へと輸送する担体輸送である。
よって、二次性能動輸送はATPの加水分解エネルギーを間接的に利用する担体介在輸送といえる。
◆ dについて
d 〇 エンドサイトーシスには、顆粒状物質を取り込む食作用と液状物質を取り込む飲作用がある。
サイトーシスとは、膜動輸送のことであり、細胞膜が変形することにより、
物質が細胞内または細胞外へと輸送されることを指す。
細胞外から細胞内への膜動輸送がエンドサイトーシスであり、
細胞内から細胞外への膜動輸送がエキソサイトーシスである。
エンドサイトーシスには、顆粒状物質を取り込む食作用(ファゴサイトーシス)と液状物質を取り込む飲作用(ピノサイトーシス)がある。
他、膜表面の受容体に結合した物質を細胞内に取り込むエンドサイトーシスもあり、受容体介在性エンドサイトーシスと呼ばれる。