薬物の生体膜透過におけるpH分配仮説 95回薬剤師国家試験問151

95回薬剤師国家試験 問151
薬物の生体膜透過におけるpH分配仮説に関する記述について、正しいものはどれか。1つ選びなさい。

 

1 消化管の粘膜を介する吸収に関する仮説であり、他の粘膜透過には適用されない。

 

2 単純拡散による膜透過に関する仮説であり、能動輸送には適用されない。

 

3 薬物の生体膜透過は分子形によるものと仮定し、分子形分率はNoyes-Whitney の式で求められる。

 

4 小腸における吸収性がこの仮説に基づく予測からずれることがあるが、これは粘膜表面が弱アルカリ性のpHに保たれていることが一因である。

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95回薬剤師国家試験 問151 解答解説

 

◆ 1,2,3について
1 × 消化管の粘膜を介する吸収に関する仮説であり、他の粘膜透過には適用されない。

 

2 〇 単純拡散による膜透過に関する仮説であり、能動輸送には適用されない。

 

pH分配仮説は物質の単純拡散による細胞膜透過に関する仮説である。
よって、単純拡散による膜透過であれば、消化管以外の粘膜透過にも適用される。

 

pH分配仮説は、電解質の単純拡散における細胞膜透過について、
脂溶性の高い分子形は細胞膜を透過し、水溶性の高いイオン形は細胞膜を透過しないとし、
電解質のプロトンの解離・保持による脂溶性の変化が膜透過に大きな影響を与えるという考えである。

 

 

◆ 3について
3 × 薬物の生体膜透過は分子形によるものと仮定し、分子形分率はNoyes-Whitneyの式で求められる。

 

pH分配仮説では、薬物の生体膜透過は分子形によるものと仮定し、
分子形分率はヘンダーソン・ハッセルバルヒの式で求められる。

 

関連問題
単純拡散による透過性とヘンダーソン・ハッセルバルヒの式 89回問149b

 

 

◆ 4について
4 × 小腸における吸収性がこの仮説に基づく予測からずれることがあるが、これは粘膜表面が弱アルカリ性の pHに保たれていることが一因である。

 

→ 〇 小腸における吸収性がこの仮説に基づく予測からずれることがあるが、これは粘膜表面が弱酸性のpHに保たれていることが一因である。

 

小腸粘膜表面においては、細胞からプロトンが分泌され、粘膜表面のグリコカリックスにより、プロトンの管腔側への拡散が妨げられていることから、小腸粘膜表面のpHは、小腸管腔内部のpHよりも低く保たれている。
このことは、小腸における薬物吸収について、pH分配仮説に基づき小腸管腔内のpHで計算した予測の吸収と、実際の吸収とがずれる一因と考えられている。

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