薬物の生体膜透過に関する記述 92回薬剤師国家試験問151
92回薬剤師国家試験 問151
薬物の生体膜透過に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
1 単純拡散による膜透過は、Fickの法則に従い、透過速度は濃度勾配に比例する。
2 単純拡散により生体膜を透過する酸性薬物の非イオン形分子の脂溶性が同じ程度であれば、pKaが小さいほど小腸から吸収されやすい。
3 能動輸送と促進拡散はどちらも担体介在輸送であり、ATPの加水分解エネルギーを必要とする。
4 P-糖タンパク質を介する薬物の生体膜透過は一次性能動輸送により起こる。
92回薬剤師国家試験 問151 解答解説
◆ 1について
1 〇 単純拡散による膜透過は、Fickの法則に従い、透過速度は濃度勾配に比例する。
詳細は下記のリンク先を参照
単純拡散とFickの法則 94回問151の1,2
◆ 2について
2 × 単純拡散により生体膜を透過する酸性薬物の非イオン形分子の脂溶性が同じ程度であれば、pKaが小さいほど小腸から吸収されやすい。
→ 〇 単純拡散により生体膜を透過する酸性薬物の非イオン形分子の脂溶性が同じ程度であれば、pKaが大きいほど小腸から吸収されやすい。
単純拡散による生体膜透過はpH分配仮説に従うとすると、
物質のpKaと透過性の関係は以下の通り。
酸性薬物ではpKaが大きいほど、分子形分率が大きくなるので、
単純拡散により透過しやすいと考えられる。
塩基性薬物ではpKaが小さいほど、分子形分率が大きくなるので、
単純拡散により透過しやすいと考えられる。
詳細は下記のリンク先を参照
単純拡散による透過性とpKaの関係 89回問149b
◆ 3について
3 × 能動輸送と促進拡散はどちらも担体介在輸送であり、ATPの加水分解エネルギーを必要とする。
促進拡散は、トランスポーターを介する受動輸送である。
受動輸送は、濃度差または電位差があるときに生じる電気化学ポテンシャル差を駆動力とし、
物質を濃度の高い方から低い方へと輸送することである。
よって、促進拡散は、担体介在輸送輸送であるが、エネルギーを必要としない。
一次性能動輸送とは、ATPの加水分解エネルギーを直接利用し、濃度勾配または電気化学ポテンシャル勾配に逆らい、物質を濃度の低い方から高い方へと輸送する担体輸送である。
二次性能動輸送とは、一次性能動輸送によって生じたイオンの勾配に由来する電気化学ポテンシャル勾配や電位差を駆動力とし、物質を濃度の低い方から高い方へと輸送する担体輸送である。
よって、二次性能動輸送はATPの加水分解エネルギーを間接的に利用する担体介在輸送といえる。
関連問題
トランスポーターを介するがATPの加水分解で産生されるエネルギーを必要としない輸送 97回問42
◆ 4について
4 〇 P-糖タンパク質を介する薬物の生体膜透過は一次性能動輸送により起こる。
P-糖タンパク質は一次性能動輸送担体であり、
ATPの加水分解エネルギーを直接利用し、濃度勾配に逆らい、細胞内の薬物を細胞外に排出する。