薬物の生体膜を介した輸送 96回薬剤師国家試験問151
96回薬剤師国家試験 問151
薬物の生体膜を介した輸送に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
1 単純拡散では、薬物は濃度勾配に従って透過し、その透過速度はMichaelis-Menten 式により表すことができる。
2 促進拡散はトランスポーターを介した輸送であるため、構造の類似した化合物の共存により透過速度が低下する場合がある。
3 P-糖タンパク質によるベラパミルの輸送は、一次性能動輸送の例である。
4 エンドサイトーシスによる高分子の輸送は、エネルギーを必要としない。
96回薬剤師国家試験 問151 解答解説
◆ 1について
1 × 単純拡散では、薬物は濃度勾配に従って透過し、その透過速度はMichaelis-Menten 式により表すことができる。
単純拡散では、薬物はトランスポーターを介さず、濃度勾配または電気化学ポテンシャル差に従って透過し、
その透過速度は、Fickの拡散速度式により表すことができる。
なお、Michaelis-Menten式は、トランスポーターを介した輸送の輸送速度を表す式である。
関連問題
・単純拡散の透過速度とFickの法則 94回問151の1,2
・トランスポーターを介した輸送の速度と基質濃度 103回問166の2
◆ 2について
2 〇 促進拡散はトランスポーターを介した輸送であるため、構造の類似した化合物の共存により透過速度が低下する場合がある。
促進拡散とは、トランスポーターを介するが、濃度勾配または電気化学ポテンシャル勾配に従い、
物質を濃度の高い方から低い方へと輸送する受動輸送である。
トランスポーターを介する輸送では、構造類似体の共存により、競合阻害が生じ、輸送速度が低下する場合がある。
関連問題
単純拡散及び促進拡散における構造類似体の共存による影響 99回問166の5
◆ 3について
3 〇 P-糖タンパク質によるベラパミルの輸送は、一次性能動輸送の例である。
一次性能動輸送とは、ATPの加水分解エネルギーを直接利用し、濃度勾配または電気化学ポテンシャル差に逆らい、物質を濃度の低い方から高い方へと輸送する担体輸送である。
一次性能動輸送担体として、以下のものが挙げられる。
・Na+,K+ ATPase
・P-糖タンパク質(MDR1:multidrug resistance protein 1)
・MRP(multidrug resistance-associated protein)
・BCRP (breast cancer resistant protein)
・BSEP (bile salt export pump)
◆ 4について
4 × エンドサイトーシスによる高分子の輸送は、エネルギーを必要としない。
→ 〇 エンドサイトーシスによる高分子の輸送は、エネルギーを必要とする。
膜動輸送は、サイトーシスと呼ばれ、細胞膜が変形することにより、
物質が細胞内または細胞外へと輸送されることを指す。
細胞外から細胞内への膜動輸送がエンドサイトーシスであり、
細胞内から細胞外への膜動輸送がエキソサイトーシスである。
膜動輸送は、低分子のみならず高分子の輸送にも関与する。
膜動輸送にはエネルギーが必要と考えられている。