薬物の生体膜透過機構 94回薬剤師国家試験問151
94回薬剤師国家試験 問151
薬物の生体膜透過機構に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
1 単純拡散は、Fickの法則に従い、その透過速度は濃度勾配に反比例する。
2 Fickの法則において、透過速度は膜の厚さに反比例する。
3 セファレキシンは、プロトン勾配を利用した担体介在輸送により小腸粘膜を透過する。
4 促進拡散は、担体介在輸送のため、エネルギーを必要とする。
5 Michaelis-Menten式に従う輸送において、薬物濃度が Michaelis定数(Km)に比べて著しく大きな値のときは、輸送速度は薬物濃度に比例する。
94回薬剤師国家試験 問151 解答解説
◆ 1,2について
1 × 単純拡散は、Fickの法則に従い、その透過速度は濃度勾配に反比例する。
→ 〇 単純拡散は、Fickの法則に従い、その透過速度は濃度勾配に比例する。
2 〇 Fickの法則において、透過速度は膜の厚さに反比例する。
詳細は下記のリンク先を参照
単純拡散とFickの法則 94回問151の1,2
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◆ 3について
3 〇 セファレキシンは、プロトン勾配を利用した担体介在輸送により小腸粘膜を透過する。
セファレキシンは、小腸粘膜のペプチドトランスポーターPEPT1が介在する輸送により吸収される。
ペプチドトランスポーターPEPT1は、H+/ペプチド共輸送体であり、二次性能動輸送の担体である。
PEPT1は、一次性能動輸送によって生じたプロトンの濃度勾配を駆動力とし、プロトンとジ・トリペプチドを共輸送するので、二次性能動輸送担体に分類される。
PEPT1はオリゴペプチドの他、β-ラムタム系抗生物質,アンギオテンシン変換酵素阻害薬,バラシクロビル,バルガンシクロビルなど構造がオリゴペプチドに類似した薬物の吸収にも関与すると考えられている。
二次性能動輸送は、ATPの加水分解エネルギーを直接利用する一次性能動輸送によって生じたイオンの勾配を駆動力とする。
よって、二次性能動輸送はATPの加水分解エネルギーを間接的に利用するともいえる。
◆ 4について
4 × 促進拡散は、担体介在輸送のため、エネルギーを必要とする。
→ 〇 促進拡散は、担体介在輸送輸送であるが、エネルギーを必要としない。
促進拡散は、トランスポーターを介する受動輸送である。
受動輸送は、濃度差または電位差があるときに生じる電気化学ポテンシャル差を駆動力とし、
物質を濃度の高い方から低い方へと輸送することである。
よって、促進拡散は、担体介在輸送輸送であるが、エネルギーを必要としない。
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◆ 5について
5 × Michaelis-Menten式に従う輸送において、薬物濃度が Michaelis定数(Km)に比べて著しく大きな値のときは、輸送速度は薬物濃度に比例する。
Michaelis-Menten式に従う輸送において、薬物濃度が Michaelis定数(Km)に比べて著しく小さな値のときは、輸送速度は薬物濃度に比例する。
Michaelis-Menten式に従う輸送において、薬物濃度が Michaelis定数(Km)に比べて著しく大きな値のときは、輸送速度は薬物濃度に関わらず最大値(Vmax)で一定となる。
担体介在輸送による物質の輸送速度(v)は、以下のミカエリス・メンテン式で表される。
ミカエリス定数(Km)は、輸送速度が最大速度の半分(Vmax/2)となる時の物質濃度に等しい。
よって、
Kmが小さいほど、物質の担体に対する親和性は高く、
Kmが大きいほど、物質の担体に対する親和性は低いと考えられる。
物質濃度がミカエリス定数に比べて極めて低い場合(C<<Km)、
Km + C ≒ Km と近似できるので、@式は下記のA式に近似できる。
A式より、
物質濃度がミカエリス定数に比べて極めて低い場合(C<<Km)、
担体輸送速度は物質濃度に比例すると考えられる。
物質濃度がミカエリス定数に比べて極めて高い場合(C>>Km)、
Km + C ≒ C と近似できるので、@式は下記のB式に近似できる。
v ≒ Vmax …B
B式より、
物質濃度がミカエリス定数に比べて極めて高い場合(C>>Km)、
担体輸送速度は物質濃度によらず最大速度(Vmax)で一定になると考えられる。
これは、担体介在輸送では、物質濃度が高くなると、飽和状態になることを表す。