尿細管分泌の併用薬による阻害 105回薬剤師国家試験問175
105回薬剤師国家試験 問175
トランスポーターを介した薬物の尿細管分泌が併用薬によって阻害され、薬物の血中濃度上昇をもたらす薬物相互作用として、トランスポーター、薬物、併用薬の正しい組合せはどれか。2つ選びなさい。
105回薬剤師国家試験 問175 解答解説
トランスポーターを介した薬物の尿細管分泌が併用薬によって阻害され、
薬物の血中濃度上昇をもたらす薬物相互作用として、
正しい組み合わせは、2と3である。
◆ 2:ジゴキシンとキニジンの併用について
ジゴキシンは、主に糸球体ろ過と尿細管分泌により尿中排泄されて消失する。
ジゴキシンの尿細管分泌にはP糖タンパク質が関与する。
キニジンは、CYP2D6阻害作用とP糖タンパク質阻害作用を有する。
ジゴキシンとキニジンを併用すると、
キニジンのP糖タンパク質阻害作用により、
ジゴキシンの尿細管分泌が阻害され、ジゴキシンの血中濃度が上昇する。
◆ 3:メトトレキサートとプロベネシドの併用について
メトトレキサートは、主に糸球体ろ過と尿細管分泌により尿中排泄されて消失する。
メトトレキサートの尿細管分泌には、
有機アニオントランスポーターのOAT1,OAT3が関与する。
腎臓においてOAT1,OAT3は、近位尿細管上皮細胞の側底膜(血管側膜)に存在し、
ジカルボン酸を細胞内から血中に出し、有機アニオン物質を血中から細胞内に取り込む交換輸送を行う。
メトトレキサートとプロベネシドを併用すると、
プロベネシドのOAT1,OAT3の阻害作用により、
メトトレキサートの尿細管分泌が阻害され、
メトトレキサートの血中濃度が上昇する。
以下、他の選択肢について
◆ 1:レボドパとカルビドパの併用について
レボドパは、ドパミンを親化合物とするプロドラッグであり、その目的は脳内への移行性改善である。
ドパミンは血液脳関門を通過できないが、レボドパはアミノ酸トランスポーターのLAT1により脳内に移行される。脳内移行したレボドパは、脱炭酸酵素により脱炭酸されてドパミンとなり、薬効を発揮する。
カルビドパは、末梢性芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害薬である。
レボドパは、末梢で芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼで脱炭酸されてドパミンになると、ドパミンは血液脳関門を通過できないので薬効が得られない。
レボドパとカルビドパを併用すると、レボドパが末梢で脱炭酸されてドパミンに変換されるのを抑制し、脳内に移行するレボドパの量を増加させることができる。
◆ 4:メトホルミンとシメチジンの併用について
メトホルミンは、主に糸球体ろ過と尿細管分泌により尿中排泄されて消失する。
メトホルミンの尿細管分泌について、
尿細管上皮細胞の血液側膜に存在する有機カチオントランスポーターのOCT2により血中から細胞内に取り込まれ、尿細管の管腔側膜に存在するMATE1、又はMATE2-Kにより細胞内から尿中に排泄される。
シメチジンは、CYP阻害作用と、トランスポーターのOCT2 ,MATE1,MATE2-Kの阻害作用を有する。
メトホルミンとシメチジンを併用すると、
シメチジンのOCT2 ,MATE1,MATE2-Kの阻害作用により、
メトホルミンの尿細管分泌が阻害され、
メトホルミンの血中濃度が上昇する。
なお、MATEは、H+と有機カチオンの逆輸送を行うトランスポーターである。
◆ 5:リチウムとロキソプロフェンの併用について
リチウムは、糸球体ろ過により尿中排泄されて消失する。
また、糸球体でろ過されたリチウムの60%以上が尿細管で再吸収されると考えられている。
リチウムとロキソプロフェンを併用すると、
ロキソプロフェンのプロスタグランジン合成阻害作用により、
腎血流量が低下し、リチウムの糸球体ろ過による排泄が低下し、
血清リチウム濃度が上昇すると考えられる。
その他、ロキソプロフェンのプロスタグランジンの合成阻害作用により、
電解質の代謝に影響があることから、血清リチウム濃度が上昇することも考えられる。
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