薬物の併用が体内動態に及ぼす影響 97回薬剤師国家試験問171

97回薬剤師国家試験 問171
薬物Bの併用が薬物Aの体内動態に及ぼす影響として、正しいのはどれか。
2つ選びなさい。

 

薬物Bの併用が薬物Aの体内動態に及ぼす影響 97回薬剤師国家試験問171

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題 排泄 一覧へ

 

 

97回薬剤師国家試験 問171 解答解説

 

薬物Bの併用が薬物Aの体内動態に及ぼす影響として、
正しいのは、選択肢2と4である。

 

薬物Bの併用が薬物Aの体内動態に及ぼす影響 97回薬剤師国家試験問171

 

 

◆ 1:リボフラビンとメトクロプラミドの相互作用について

 

リボフラビン(ビタミンB2)は小腸の担体を介して吸収される。
胃内容排出速度が低下すると、リボフラビンが少しずつ小腸に輸送され、
担体が飽和しにくくなるので、吸収量が増大する。
一方、胃内容排出速度が上昇すると、短時間で多くのリボフラビンが小腸に輸送され、
担体が飽和しやすくなるので、吸収量が低下する。

 

メトクロプラミド(プリンペラン)は、消化管の副交感神経終末のドパミンD2受容体を遮断し、ドパミンによるアセチルコリンの遊離抑制を解除することで消化管運動を促進するので、胃内容排出速度を上昇させる。
また、メトクロプラミドの消化管運動亢進作用は、消化管の副交感神経終末のセロトニン5-HT4受容体刺激作用によるアセチルコリンの遊離の増大も寄与すると考えられている。

 

よって、リボフラビンとメトクロプラミドを併用すると、
メトクロプラミドにより胃内容排出速度が上昇し、
小腸のリボフラビンの担体が飽和するため、リボフラビンの吸収は低下する。

 

 

◆ 2:トリアゾラムとエリスロマイシンの相互作用について

 

トリアゾラム(ハルシオン)は、主にCYP3A4で代謝されて消失する。

 

エリスロマイシンは、14員環マクロライド系抗生物質であり、
CYP3A阻害作用とP糖タンパク質阻害作用を有する。
エリスロマイシンのCYP3A阻害作用について、
代謝物または代謝中間体がCYPのヘム鉄と共有結合を形成し、
安定な複合体となることでCYPの活性を阻害する。
この機構によるCYPの阻害は、不可逆的な阻害である。

 

よって、トリアゾラムとエリスロシンを併用すると、
エリスロマイシンのCYP3A4阻害作用により、トリアゾラムの代謝が阻害され、
トリアゾラムの作用の増強及び作用時間の延長が引き起こされ、
その影響は著しいと考えられる。

 

 

◆ 3:サリチル酸と炭酸水素ナトリウムの相互作用について

 

尿細管での薬物の再吸収は、
多くの場合、単純拡散により起こり、pH分配仮説に従う。
この場合の尿のpHと再吸収量の関係は以下の通り。

 

・酸性薬物の再吸収
尿のpHが低いほど、分子形分率が大きくなるので、
再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。
尿のpHが高いほど、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。

 

・塩基性薬物の再吸収
pHが低いほど、分子形分率が小さくなるので、
再吸収は減少し、腎排泄速度は増大する。
pHが高いほど、分子形分率が大きくなるので、
再吸収は増大し、腎排泄速度は減少する。

 

サリチル酸は酸性薬物であり、
単純拡散により尿細管再吸収されるので、
炭酸水素ナトリウムの投与により尿がアルカリ性になると、
分子形分率が小さくなり、尿細管での再吸収が減少する。

 

 

◆ 4:メトトレキサートとプロベネシドの相互作用について

 

メトトレキサートは、主に糸球体ろ過と尿細管分泌により尿中排泄されて消失する。
メトトレキサートの尿細管分泌には、
有機アニオントランスポーターのOAT1,OAT3が関与する。
腎臓においてOAT1,OAT3は、近位尿細管上皮細胞の側底膜(血管側膜)に存在し、
ジカルボン酸を細胞内から血中に出し、有機アニオン物質を血中から細胞内に取り込む交換輸送を行う。
メトトレキサートとプロベネシドを併用すると、
プロベネシドのOAT1,OAT3の阻害作用により、
メトトレキサートの尿細管分泌が阻害され、
メトトレキサートの血中濃度が上昇する。

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
97回問171(e-RECさん)

トップへ戻る